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浅草キッド、ビートたけしに言いたい放題

浅草キッド

去る9月23日(水)、上野にて、浅草キッド(水道橋博士・47、玉袋筋太郎・42)が「コメディ映画講義」を行った。進行役はいとうせいこう(48)が務めた。

これは浅草・上野を中心に行われた「第2回したまちコメディ映画祭in台東」のイベントのひとつ。浅草で有名になった浅草キッドは、まさにこのイベントに相応しいゲストといえる。玉袋は「台東区の映画祭で俺たちが呼ばれないわけにはいかない」とホームグラウンドの舞台に立ててご満悦。2人は自ら推薦する2本のコメディ映画の見どころについてまったりと1時間語り合った。

浅草キッドは、講義テキストとして北野武の『みんな〜やってるか!』と渥美清の『男はつらいよ 寅次郎相合傘』の2本を選出した。2本とも浅草フランス座ストリップ劇場から巣立った先輩の映画である。以下、彼らのやりとり。

玉袋「コメディ映画講義ということなので、本当は酒井法子の『審理』を取り上げたかったんですけど(会場笑)」

水道橋「あれは今見るとコメディですからね。時代との兼ね合いで映画の評価は変わっていくんです。『みんな〜やってるか!』は、15年前の映画ですけど、『ソナチネ』で世界の北野と言われた監督がこの映画を作って、初めて見たときにはショックを受けました」

玉袋「弟子が総出演してます。僕らも小さな役で出てますね。今これみたらお客さん帰っていくんじゃない?」

水道橋「今じゃなくて、これは当時からお客さん帰ってましたよ。15年前、試写会期間中に事故が起きて、当時は北野武の遺作と言われてましたけど、僕はこの映画の出来をみて自殺したのだと思ってました(会場笑)」

玉袋「細川ふみえ邸に行った帰りに事故ってた。それが『菊次郎の夏』につながってんのかな」

水道橋「だいたい殿の愛人が出てますから」

玉袋「手つけてるのかというのはあるね」

いとう「この映画、ベタに見えて、実は笑いのリズム感が変ですね。不思議なビート感がある映画です。集団でみたら面白い。映画ってそうですよね」

水道橋「いや、みんなで見てて、完璧に滑ってましたよ。水野先生だけが大笑いしてました」

玉袋「さすがは水野先生。巨匠です」

水道橋「タランティーノが殿のことを褒めてますといったら、喜ぶかと思ったら滅茶苦茶機嫌悪くなったんですよ。なんでタランティーノを上の人みたいに言うのかって怒ってた。すごくないですか?」

玉袋「危ねえんだよな殿と映画の話してると。地雷がいっぱいある。この前岩井俊二の名前を出しちゃったのはいけなかったなあ。殿ピピピと反応してた。あいつはケンカ弱いだろって言ってた」

水道橋「岩井俊二はケンカをしたことがない奴が作ったアクション映画だから暴力性がないと。殿はそれに関してはすごくうるさいんです。映画監督としては自分の身についたものしか映画に出さない主義だから。それから殿は観客の公式にあるものを良しとしないんですよ。一番凄いのは『HANA-BI』でベネチアで金獅子賞を取ったとき、特に久石さんの音楽がすごく評価されて、そしたら次回から久石さん切ったんですよ。音楽がいいんじゃないって」

玉袋「『スター・ウォーズ』にジョン・ウィリアムズを外すようなものですね」

水道橋「殿は『キッズ・リータン』とかちゃんとした映画も撮れるんですけど、その北野武がこれを作ったんですよ。普通ならカーセックスしたいというだけで映画は撮らないでしょう。ずっと最後までその目的だけで見せてますから。殿は映画評論的に知的に語られる部分が嫌だったりするんです。肥柄杓でうんちを投げるのは師匠の根本的な映像センスで、アカデミックな映画の見方に対して糞尿をまき散らす感覚です。こういう感覚でやらないと俺は俺じゃないっていう感じ。映画に平伏しないんですね。だからこれは松本人志にも見てもらいたいですね。こういう空振りの仕方を堂々と楽しめと。皆さんには映画監督のフィルモグラフィはここまでふりきれるんだというところを見て欲しいですね。あえてこういうことを作る意味を見つけて欲しいです」

−−延々とビートたけしの話題で言いたい放題盛り上がってしまい、強制的に寅さんのネタに回される。

いとう「『男はつらいよ』については一時期、寅さんを避けてた時期があった。大人になってみると涙が出ちゃうんですよね」

水道橋「リリー・シリーズは人気ではいつも上位に入るのですが、寅さんの映画を全部見たという人にアンケートを取っても『相合傘』が一番になるんです。とくにメロンのシーンがね」

玉袋「喜劇の王道だね。リリーっていう女がね。あのテーマ聞くだけで涙が出ちゃう。リリーの哀愁、いいよなあ。リリーは理想の女性像です。今も俺はリリーを探して旅をしてますが、結婚しても俺のリリーはまだ現れません」

水道橋「大原麗子さんが亡くなったときの浅丘ルリ子の弔辞、あんだけ立派な弔辞は聞いたことなかったです」

いとう「中国で映画を勉強してる人に寅さんを知らない人はいないと言われているのに、日本の監督は寅さんを軽視してますよね」

水道橋「金正日がいかに寅さんが好きだったのかと聞いたんですけど、金正日は衛星に監視されないように何の予定も決めずに転々とするらしくて、それが寅さんみたいらしいですよ。あまりにもこの映画が好きすぎて人民に公開しようと思ったんですって」

玉袋「北朝鮮の寅か。山田洋次監督も共産主義者なんですよね。そういう意味では可能性はなくはない」

水道橋「寅さんはこれまで何度リリーと結婚できるチャンスがあったか」

玉袋「もてたいのに、向こうから来ると引っ込んじゃう。馬鹿野郎寅次郎! リリーも寂しいのに気が強いんだからなあ。まったくもう!(会場笑)」

水道橋「これも『みんな〜やってるか!』とテーマは同じなんですよね。セックスやりたいっていう。あと下町の映画になってる。今日は皆さんに大失敗作と大成功作を比較してもらいます(会場笑)」

玉袋「寅さんを見てると、大仰なセットとか使わなくても言葉と芝居だけでちゃんと映画はできるんだと思いますね。そして渥美さんの芸人としての度量の凄さ。ヤクザみたいなことをしてた本当の渡世人だから、あの啖呵売は身につけたものが出て凄い迫力です。渥美さんは役作りのために家族と別居もしてたそうですよ。最後の作品では病魔と闘って動くこともできなかったのに気力で撮影してました。神戸の被災地で渥美さんの愛想が悪くて文句言ってた人が、渥美さんが亡くなった後、お詫びの手紙を書いたそうですよ。いい話だな。渥美さん、今日あたり降りて来てるかもな」

水道橋「寅さんって誰しも忌避する時期がありますよね」

玉袋「アクション映画ばかり見て、何が人情だってかっこつけて見なかったけど、最後にはここに戻ってきて泣いちゃう」

いとう「試写会では勝負という気持ちで構えて見がちですよね。ラーメンバトルみたいにうまかったという顔をしてたまるかという気持ちで食べがちだけど、ラーメンなんだからおいしく食べればいいじゃない。それと同じで映画も皆さん一緒に楽んで見て欲しいですね」

こんな感じのやりとりで、会場では終始ウケまくってたけど、生々しすぎてとても全部を掲載できず、大部分をカットした。少しでも雰囲気が伝われば幸いである。(文・写真:澤田英繁)

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2009/10/04 2:51

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