川嶋あいにとって8月は最も大切な月
8月11日(火)、六本木にて、『8月のシンフォニー』の完成披露試写会が行われ、西澤昭男監督(67)と原作者の川嶋あい(23)が登壇した。
『8月のシンフォニー』は、WAOグループ会長の西澤昭男が手がけるアニメーション映画の第3弾。西澤会長は以前から監督業に興味を持っていて、60歳間近になったころからアニメーションの制作会社を設立して、自分で監督作を発表するようになった。3年に一本ずつ、10年で3本を作ろうと決めて取りかかり、すでに発表した2作品はいずれも外国の映画祭でグランプリに選ばれている。『8月のシンフォニー』は西澤監督の3本目、つまり西澤会長にとっては恐らく最後となるアニメーション映画ということになる。
西澤監督はもともとは実写の監督を志望していたので、アニメーション映画を作るときも、気持ちは実写映画のそれと同じ。子供に媚びない映画を作ることを目指したという。
本作を製作することに決めたのは、本当に偶然だったという。たまたま書店で目にした「日本中が泣いた」という帯を見て買った一冊の本が川嶋あいの『最後の言葉』だった。川嶋あいは路上ライブや学園祭の他にも、『あいのり』などのテレビ番組の主題歌や、トヨタや花王などの数々のCMソング、セガのゲーム主題歌など各業界で人気のシンガーソングライターだったが、そのドラマティックな生い立ちは『24時間テレビ』、『めざましテレビ』などで紹介され、大きな話題を呼んだ。
西澤監督はそれまで川嶋あいのことを全く知らなかったという。『最後の言葉』を一晩で読んで感銘を受けた監督は、翌日CD屋に駆け込み、川嶋あいのCDを探したという。「レコードならすぐに見つけられるんですけど、60も過ぎると、CD屋はどこに何があるのかさっぱりわからなくて、がんばって探してみたのですが、どうしても見つけることができず、恥ずかしいけど店員に『川嶋あいさんのCDってどこですか?』と訊いてみました。店員には『なんだろうこのおじさん』という変な目で見られましたよ」と照れ笑い。決めたらすぐに行動するという西澤監督は、CD屋で『路上集1号』を購入するや、聴いてすぐに事務所にアニメーションの映画化を打診したという。
映画は2年で完成。アニメーション映画だが、一般的なアニメにありがちなアニメならではの動きは抑えられ、実写を意識した実に落ち着いた仕上がりになっている。川嶋あいの名曲「天使たちのメロディー」、「旅立ちの日に・・・」、「・・・ありがとう...」、「大丈夫だよ」なども見事なアニメーションとなって表現されている。また、渋谷の様子が細部まで再現されているところは、他のアニメには見られない大きな魅力といえる。中でも渋谷音楽ホールのシーンは圧巻。監督はこのCGを作るためだけに渋谷C.C.Lemonホールを借り切り、ファンに実際にシートに座ってもらって、川嶋あい本人が歌っているところを8台のカメラで撮影するという徹底ぶりだった。最初は完成品を見ることを恥ずかしがっていた川嶋も出来には満足したようで「ホールのシーンが見どころなので見ていただきたいです」とやや声を高めにアピールしていた。
この日、監督はこの映画を完成させるまで、一度も川嶋あい本人に会わなかったことを明かしてくれた。この映画を「川嶋あい物語」ではなく、普遍的なドラマにしたかったからだという。川嶋も監督にすべてを任せたという。
監督は「このストーリーは、今の時代では極めて奇跡に近いです。自分の利益を考えている世の中に、この子を歌手にしていこうと回りの人たちが盛り上げていく。こういう利他の心が今の時代に必要だと思う」とコメント。映画を通してその思いが伝わればと願っていた。
川嶋は「仲間との絆、出会いに支えられて、ここまでたどりついたと思っているので、改めて自分を支えてくれた仲間に感謝したいと思いました。この映画を通じて、せちがらい世の中でも夢を持つことの大切さ、若い人たちに目標を持って情熱を注いで生きて欲しいなというメッセージが伝わればいいなと思います」とコメントしていた。
タイトルに『8月』とある。川嶋にとって8月は1年で最も大切にしている月だ。「8月20日が母の命日で、毎年恒例でライブをやってます。ライブに向けて準備していくので8月は一番緊張感があります。タイトルは監督が考えましたが、私の思いが監督に通じたのかなとびっくりしました」ということだ。もちろん今年も川嶋あいは渋谷C.C.Lemonホールで8月20日にライブを行う。映画が公開されるのはその2日後だ。26日には同じ場所でつばさ祭もある。今は『あいのり』も再評価されているところ。川嶋あいブームの気運が高まっている今、この波にのらないわけにはいかない!
『8月のシンフォニー 渋谷2002〜2003』はゴー・シネマの配給で、8月22日より全国ロードショー。
2009/08/13 4:37