ファン感涙『銀河鉄道999』30年越しの舞台挨拶が実現

銀河鉄道999

東映は、新宿バルト9にて、8月4日(火)、「銀河鉄道999映画祭」を開催した。これは、劇場版『銀河鉄道999』のBlu-rayが9年9月9日(水)に発売することを記念して、作品を大きなスクリーンで上映しようじゃないかという趣旨のイベント。77年に原作を連載開始、78年に放送されたテレビアニメは最高視聴率22.8%を記録。そして今からちょうど30年前の79年8月4日に劇場版が公開され、大ヒットした。イベントには、原作者の松本零士はじめ、りんたろう監督、企画の高見義雄、音楽の青木望、主題歌のタケカワユキヒデ、キャストの野沢雅子、池田昌子、肝付兼太、麻上洋子が出席。実に30年越し、初となるオールスターの舞台挨拶が実現した。

現在40歳前後の世代なら、誰しも子供の頃に『銀河鉄道999』を見ていたであろう。この世代なら、これを生涯のアニメ・ベストワンにあげる人が多い。イベントに集まった観客の顔ぶれも、40歳前後の人が多かったように思う。

僕の姉は1969年生まれで、まさにこの世代である。姉は10歳の時に『銀河鉄道999』を映画館まで見に行ったと言っていた。この劇場版がテレビ放送されたときに、姉がカセットテープに録音しておいてくれて、僕が成長して10歳くらいになったときにそのカセットを聴かせてくれた。父親の咳払いや僕のわめき声まで入っちゃってるテープだったけど、音だけなのにこれが本当に面白くて、映像は全部僕の勝手な想像だったけど、そこに広がる大宇宙に子供ながらに感動したものだった。ラストのテーマ曲もかっこよくて、いつか映像付きで見てみたいと思っていた。そして今、この年になって、劇場版『銀河鉄道999』をやっと映像付きで見ることができたのである。しかも僕のすぐ傍にはメーテル役の池田昌子さんが座ってくれて、「すごい!オードリー・ヘプバーンだ!」と内心感動した。しかも鉄郎役の野沢雅子さん、車掌役の肝付兼太さんも近くに座って30年ぶりに映画をご覧になっていた。子供の頃から大好きだった孫悟空、スネ夫が目の前にいる! 憧れの声優さんたちと一緒に、前からずっと見たいと思っていた映画を、こんな大きなスクリーンで見られようとは、こんなに幸せなことはない。

映画は、ほとんど初めて見る感覚で見させてもらったが、すごい映画だと思った。ラストにはうるうるきた。市川崑が監修しているためかカメラワークや編集もかなり本格的。まだ『ルパン三世 カリオストロの城』も公開されていない時代に、2時間強というこれほどの大作が作られていたとは。世界観の広がりに圧倒させられ、人生の深いテーマがたっぷりと詰まっていることに驚きである。そしてイマジネーションをかきたてる映像の素晴らしさ。999号が飛び立っていくシーンは神々しくもある。映画を見終わった後、ファンの一人が「松本零士は神だ」とつぶやいていたが、僕も同感である。こんな映像、普通の人にはとても創造できないだろうから。

イベントの後、僕は早速テレビアニメ版をもう一度見直してみたが、劇場版とテレビ版では解釈がちょっと違っていた。どちらが好きかは好みの問題だが、劇場版の方がよりドラマティックなものになっていて、個人的には劇場版がよくまとまっていると思った。テレビ版をそのままダイジェストに編集してつなげるのではなく、あらたに1から作り直しているところが豪華である。テレビ版では5分くらいしか登場しないクレアが劇場版では初恋の象徴的なキャラとして脚色されており、僕がテレビ版ではベストエピソードだと思っている大四畳半の『男おいどん』のエピソードなどは採用されていなかった。それもテンポやバランスを考えてのことだろう。しかしクライマックスの惑星崩壊は物凄い迫力。この監督が後に『メトロポリス』で再び大崩壊シーンをやってみせるわけだ。

キャラクターも秀逸。鉄郎とメーテルと車掌の服装のデザインからして松本先生の神ぶりに圧倒される。メーテルは物凄く綺麗で8頭身なのに、鉄郎は3頭身。3頭身のキャラと8頭身のキャラが同じ世界に同居して全く違和感がないところも凄い。そして声優がうまい。当時は声優がアニメのブランドともいえた。野沢雅子さんは「くっ!」という声が無茶苦茶うまい。メーテルはあらためて男達の青春時代の理想の女性像の象徴的存在なのだと実感。池田昌子さんの綺麗な声にうっとり。メーテルが鉄郎を自分のコートに包み込むシーンにはドキドキ。メーテルはアニメ史上最高の美女といっても過言ではあるまい。

舞台挨拶では、声優が登場しただけで拍手喝采だった。肝付さんがイベントの一番最初のところで「上映時間は地球時間で2時間8分でございます。途中下車される際には本日お配りしましたパスが必要となります」と映画館の館内アナウンスをしてくれて、この洒落た演出にファンは大喜び。お年を召されても、これだけの拍手喝采が贈られるのは大変なこと。僕自身、どんなハリウッドスターを取材するときよりも、今回の声優の取材の方がワクワクした。子供の頃に夢をもらったからだろう。イベント中も声優陣は我が子を見守るような表情だった。「ぜひまたこの30年後も会いましょう」と元気もいっぱい。やっぱり声優という職業は本当に偉大な職業なんだなあと思った。

MCの伊藤さとりさんも初日に母親と一緒に見に行ったという『999』世代で、ある意味、訪れていた全999ファンを代表する存在だったと思う。伊藤さんは毎日数多くの映画イベントの司会をやられているプロ中のプロだが、この日は何だかいつもよりも嬉しそうで瞳がキラキラと輝いている感じがした。タケカワユキヒデさんがテーマ曲を歌ったときには、感激のあまり今にも泣き出しそうな顔をして思わずステージにかけあがり「ありがとうございます!」とタケカワさんの手をギュッと握りしめていた。そんな姿を見た我々も彼女から感動をもらった思いである。本当に『999』が好きなんだという気持ちが伝わってくる名司会だったと思う。

イベントには、999秒の短編『銀河鉄道999 ダイヤモンドリングの彼方へ』(9年9月9日公開)に声優として出演している足立梨花が応援にかけつけた他、モデルで女優の杏がメーテルのコスチュームで登場した。杏は「大ファンの皆様の前でこのような格好をさせていただくのは大変恐縮です」とコメント。松本先生にT・ジョイ映画館の無期限定期券をプレゼントするところでは司会者から「まるで本当に鉄郎とメーテルみたい」と言われていた。この日、杏は黒髪での登壇だったが、『ダ・ヴィンチ』9月号では、金髪ウィッグバージョンの写真を見ることができる。(文・写真:澤田英繁)

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2009/08/08 0:43

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