川嶋あいの自伝を映画化『8月のシンフォニー』
7月30日(木)、渋谷109にて、『8月のシンフォニー 渋谷 2002~2003』のPRイベントがあり、シンガー・ソングライターの川嶋あい(23)が出席。ミニライブを開いた。
『8月のシンフォニー』は、川嶋あい原作の「最後の言葉」をアニメーション(一部実写)で映像化したもの。歌手になる夢を抱いて単身上京したアイ(川嶋あいがモデル)が、たまたま出会った学生メンバーに支えられながら、渋谷を拠点に路上ライブ活動を続け、わずか1年半で渋谷音楽ホール(渋谷C.C.レモンホールがモデル)のステージに立つまでを描く。
この映画、僕も一足先に見させてもらったけど、これが思いの外に良い話で、「感動をありがとう」という気持ちでいっぱいになった。この映画を見て、夢を持つこと、そしてその夢に向かって進んでいくことの大切さを教えられた。まるで作り話のような話だけど、これが実話というのだから感動である。僕の専門は映画なので、恥ずかしながら、川嶋あいさんのことはこの映画を見るまで存じ上げなかったのだけど、この映画を見て以来僕も大ファンになった。映画を見ていて、彼女の生い立ちには何か僕も励まされる思いだったし、そのけなげでひたむきな姿には何度も胸を打たれた。映画のストーリーには下手な小細工は何もない。ただ純粋に彼女の歌声だけでも見る者をじんとさせるものがあった。
実写でも表現できるものをアニメーションで表現したことは正解だったと思う。これは「渋谷の映画」と例えてもいいほど、2002・2003年当時の渋谷の町がいきいきと描かれている。渋谷109やハチ公、スクランブル交差点はもちろん、薬局や家電量販店など、建物のひとつひとつが細部まで再現され(固有名詞の名前は若干変えられているが)、渋谷の町がそっくり絵となってスクリーンに映し出される。最初のシーンで109の映像が映し出されたときの感動といったら、これは決して実写では味わえないだろう。そして映画の中に登場する人々の何という心の美しさ。アニメのキャラで見せられるとその感動も倍増する。
川嶋あいは、「自伝を映画化するということでびっくりしました。自分のことなので照れ臭いんですけど、監督さんがフィクションを交えながら描いてくれて、率直に心温まる良い映画だと思いました。私が路上ライブをやっていた時期の話なので、自分自身を客観的に見られました。全国の名所を回るシーンが好きで、映画を見て懐かしい気持ちになりました」と映画の感想をコメント。「私はこの言葉に励まされてきました。頑張れと言われるよりも好きな言葉です」と前置きしてから、映画の主題歌「大丈夫だよ」をキーボードの弾き語りスタイルで歌った。渋谷を歩く人誰しもが立ち止まり、路上の天使の歌声にじっと聞き入った。
この日、イベントの開催場所に渋谷109を選んだのは運命的である。109は『8月のシンフォニー』のシンボルともいえる場所でもあり、渋谷の路上(厳密には「路上に特設されたステージ」だが)でライブを行うことには特別な思い入れもあっただろうから。川嶋あいは単身上京して、「路上ライブ1000回」を目標に掲げ、ここ渋谷で1000回目のライブを達成、それを最後に路上ライブを終了した。ここ渋谷の路上に、この日、川嶋あいが帰ってきて、昔のように歌を歌ってくれたわけだから、訪れたファンもきっと感慨深かったに違いない。
『8月のシンフォニー 渋谷 2002〜2003』はムービーアイの配給で、8月22日(土)から全国ロードショー。8月26日(水)には渋谷C.C.レモンホールにて川嶋あいも出演する「つばさ祭'09〜新生の陣〜」を開催する。川嶋あいが歌う「明日への扉」と「My Love」を収録した『あいのり 1999-2009 THE BEST OF LOVE SONGS』は7月29日から絶賛発売中。(文・写真:澤田英繁)
2009/07/31 13:45