セーラー服VSゾンビ集団『山形スクリーム』

『山形スクリーム』完成披露試写会にて

7月23日(木)、有楽町にて、『山形スクリーム』の完成披露試写会があり、監督の竹中直人(53)、出演の成海璃子(16)、AKIRA(27)、マイコ(24)、沢村一樹(42)、音楽担当の栗コーダーカルテットが登壇した。

『山形スクリーム』は、竹中直人が仕掛ける”ドホラー映画”。役者としてのイメージが強い竹中だが、監督としてのキャリアは実に30年以上あり、これまでに発表した作品は商業映画のデビュー作『無能の人』はじめ、国外での評価も高い。竹中は家にレーザーディスクだけでも何千枚も所有しているほどの無類の映画好きだというが、『山形スクリーム』はそんな竹中の”映画愛”にあふれた一本になっている。

劇中では、『フランケンシュタイン』、『シャイニング』、『死霊のはらわた』、『ボディ・スナッチャー』、『マーズ・アタック』など、ホラー映画の名作のワンシーンが引用され、名作にオマージュが捧げられているが、それ以上に僕が映画を見て思ったことは、「なんと楽しんで映画を作ってるんだろう」ということだった。ハチャメチャな映画ではあるが、ひとつひとつのシーンに映画愛を感じ、クライマックスのところではちょっと鳥肌が立つような感動的なシーンもあって、予想以上に面白かった。

内容は一言で言えばゾンビ映画である。山形のとある村。村人たちが次々と落武者ゾンビに殺されゾンビ化していく。僕はゾンビ映画が本当に大好きで、僕がもし監督だったとしたら何か一本映画を作るとしたら、最も作ってみたいジャンルがこれ。ゾンビ映画というのは、世界中に熱烈なファンを有し、ある種何かを超越しちゃったような世界観を持つ映画ジャンルの極め付けだと思う。だからゾンビ映画を作る気になる監督といったら、相当な映画オタクだと思うのだが、竹中監督がこのジャンルに挑戦するというのは、もうそれだけで映画愛が十分すぎるほど伝わってくるのである。この感動は『ショーン・オブ・ザ・デッド』以来である(知らないか)。

最近の映画はハリウッドにせよ、監督の「作家性」みたいなものが薄れてきていて、監督の個性を感じない映画のヒットが目立つが、その点、『山形スクリーム』は監督の個性全開という感じである。「映画オタクが映画を作っちゃったぞ」というこのオーラを楽しいと感じ取れるかどうかが、この映画の評価を左右するのではないかと僕は思う。

本作の一番の見どころはずばりキャスティング。主役から脇役、チョイ役まで、これ以上ない見事なハマリっぷりである。赤井英和、篠原ともえ、クリスタル・ケイ、荻野目慶子など、「え、この人がこんなところに」という驚きがあり、ただ画面に出て来ただけでぷっと笑ってしまう。

女子高生がセーラー服の格好でゾンビたちと戦う画などたまらない。悲劇のヒロイン風の成海璃子、スケバン風の波瑠、グラドル風の桐谷美玲、天才博士風の紗綾の4人組が無茶苦茶可愛く、組み合わせが役どころ的に絶妙のバランス(璃子と波瑠は名前的な相性も良し)。それをまとめるマイコ先生の浴衣姿がこれまた魅力的で、僕は映画を見ていて女優たちをこんなにも可愛いなあと思ったことはあまりなく、多分竹中監督は女性を撮るのがうまい監督なのだろう。

馬鹿正直な青年を演じるEXILEのAKIRAと、そのおばあちゃん役を演じる由紀さおりは最高の適役。AKIRAは役の好感度も高く、このまま俳優に転向すべきではないかと思ったほど素晴らしかった。舞台挨拶では竹中監督はAKIRAのことを「コメディアンがアホになっても面白くない。EXILEのAKIRAさんならこの役を演じてくれると信じていました」と紹介していたが、まさにその通りだ。AKIRAは「普段EXILEでは負の部分を出せませんが、映画では負の部分を思い切り出して、開放しました」とコメントしていた。

竹中監督はマイコについては「独特な声に惹かれました。直感的に本質はひょうきんな人かもしれないと思いました」と紹介。マイコ自身は「大人になって、今まで押し殺してきましたが、実はこの役は自分に一番近いキャラで、やりやすかったです」と話していた。

ゾンビのボスを演じる沢村一樹は唯一人笑いのない役どころ。竹中監督は「素敵な素敵な品のある俳優は誰だろうと思ったら、私の中では沢村一樹しか考えられなかった」と紹介。エロ男爵の異名をとる沢村に対し「品のある」と表現していたことに会場から笑いが巻き起こっていた。続いて沢村が「監督がわがままで」とコメントすると、竹中監督は「えっ」とショックを受け、子供みたいにすねてしまった。成海はそんな竹中監督の横で終始笑いっぱなしだった。

劇中、普通なら「うおりゃー!」というところで、マイコが「チンスコウ!」と叫ぶシーンがある。このシーンでは劇場が大爆笑だったが、僕はこのシーンだけワケがわからず、チンスコウに何か所縁でもあるのかと、家に帰って色々と調べてしまった。どうやら特に深い意味はなく、語呂的な面白さで採用したセリフだったようだ。ある意味、このセリフの勢いがこの映画の本質を一言で表していると思う。このユーモアがわかる人ならオススメの映画。ぜひカップルで、ゾクゾクしながらゲラゲラと笑ってもらいたい。(文・写真:澤田英繁)

『山形スクリーム』はギャガ・コミュニケーションズの配給で、8月1日全国ロードショー。

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2009/07/25 1:26

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