アカデミー賞を独占していたディズニーの往年の人気シリーズが今ここに復活

ディズニーネイチャー

6月29日(月)、六本木で行われた『ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密』の記者会見に行ってきた。会見にはディズニーの新レーベル<ディズニーネイチャー>を立ち上げたジャン・フランソワ・カミレッリと、同作品プロデューサー兼監督・撮影のマシュー・エバーハード、日本語版ナレーションを担当した宮崎あおいが出席した。

米アカデミー賞の歴史においてこの賞を最も多く受賞した人はウォルト・ディズニーである。それも2位を遠く引離して桁違いの本数を獲得している。ディズニーは『ダンボ』、『バンビ』など、アニメーションの世界で広く知られている人だが、その一方で、ドキュメンタリー映画の製作者としても知られ、自然をテーマに製作したドキュメンタリー映画の半数以上でアカデミー賞ドキュメンタリー映画賞を受賞しており、同部門においてはほぼ独占に近かった。ディズニーが誰よりも多くのオスカー像を持っているのはそのためである。

ディズニーは「自然はアニメーション以上にドラマチック」と言った。僕も昔『水鳥の生態』や『砂漠は生きている』などを見たことがあるが、今から50年以上も前に、こんなにすごいドキュメンタリーがあったのかと、目ん玉が飛び出るほどぶったまげたものだ。自然のありのままの映像なのに、それはあまりにもドラマチックで、これぞドキュメンタリーの元祖にして最高傑作だと思った。

1949年からほぼ年間に1本の割合で新作が発表され、日本では中編が『自然の驚異』シリーズ、長編が『自然の冒険』シリーズと題されて公開されていたらしいが、ディズニーは1960年に製作を終了している。

それから半世紀が経ち、再びこのシリーズが復活することになった。それが今回紹介する<ディズニーネイチャー>シリーズである。近年は『皇帝ペンギン』を筆頭に『アース』など自然を描いたドキュメンタリーが大ヒットを記録しており、『アース』などを見るにつけ僕は『自然の驚異』シリーズを連想していたものだったが、ついにここにきて本家が動き出したわけである。この映画の観客層の多くは、恐らく半世紀前のシリーズを知らないだろう。しかし、そこをあえて堂々と半世紀前のシリーズの継承作品と謳っているところに大きな意義がある。ディズニーの意志がここに引き継がれている。『自然の驚異』ファンの僕としてはこのニュースに興奮せずにはいられなかった。物凄く期待していたし、その名を汚さないかという不安もあった。しかし、実際に映画を見てみて、不安は何もかも吹っ飛んだ。目まぐるしく姿を変える湖の映像の不思議、息を呑む美しさは、紛れもなく往年のシリーズの醍醐味を継承したものだった。フラミンゴってこんなに神秘的な鳥だったのかと、その生態にただただ驚くばかりだった。

僕なりに考えているドキュメンタリーに必要な要素というのがいくつかあって、例えば、題材の興味・目新しさ・意外性、ドラマティックなストーリー、ユーモア、映像と音楽のスペクタクル、文化的価値、などなどだが、これらの条件すべてを満たしているドキュメンタリーというのは本当に少ない。しかし『フラミンゴに隠された地球の秘密』にはこれらの要素がすべて盛り込まれてある。ここ数年間に作られたドキュメンタリー映画の中でも最も刺激的な感動に溢れた作品になっているのではないかと思う。

なぜ今更このシリーズを復活させたのかと訊けば、カミレッリは映画館のデジタル技術の発展を一番の理由にあげている。「今こそテレビとは全く違うもの、劇場の大画面で見るべきハイクオリティなドキュメンタリー映画を作るべきだ」というのがカミレッリの持論だ。

エバーハード監督は鳥を驚かさないように小屋に隠れて撮影していたという。フラミンゴ以外ほとんどの生物が生きて行けない気温55℃以上のこの環境下で、35ミリの重たいカメラで撮影するのはさぞかし困難だったのではないかと思われるが、監督は「撮影は苛酷だったけど、良い映像が撮れると、そんな疲れも一瞬にして忘れてしまうんだ」と笑顔で話していた。まさに入魂の力作である。

なお、本作にはエバーハード監督の他にもう一人リーンダー・ワードが共同監督として参加している。二人の役割分担については、主に映像的な部分についてエバーハード、音楽的な部分についてリーンダー・ワードが受け持ったとのことだ。この映画の音楽は映画のために作曲されたものだが、ある意味音楽が主役といってもいいほど映像と完全にシンクロしている。映像と音楽の渾然たる融合は、『ファンタジア』以降、『自然の驚異』シリーズ含め、ディズニーが昔から最も得意としていたことである。

宮崎は「フラミンゴは服にプリントされていたり、キーホルダーだったり、普段キャラクターとしてはよく見慣れたものですが、知らないことが多くて、映画では新しい発見の連続でした。映像も本当に素晴らしく、こんな作品を人間が実際に現地に行って撮ったというのは本当に凄いと思いました。フラミンゴには沢山のドラマがあって、どうしてフラミンゴがピンクなのかも学びました。この作品に参加できて光栄です」とコメントしていた。

カミレッリは宮崎の目を見てにっこりと微笑み、「シリーズ第1弾で宮崎あおいさんに参加してもらったことで幸先の良いスタートを切ることが出来感謝している。宮崎さんは<ディズニーネイチャー>の親善大使のような存在になって欲しい」と上機嫌で話していた。

<ディズニーネイチャー>シリーズは今後も毎年1本ずつ新作を公開していくとのことで、来年は花粉を運ぶ小さな生物について描く『ヒドゥン・ビューティー』が第2弾として控えている他、『アース』の監督がメガホンを取る作品など、着々と製作は進行中である。(文・写真:澤田)

『ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密』は、8月28日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開。

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2009/06/30 23:51

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