アンジェリーナ・ジョリーこれぞ記者会見のお手本
【東宝東和】1月30日(金)六本木にて、アンジェリーナ・ジョリー主演作『チェンジリング』の来日記者会見が行われました。
『チェンジリング』は、1928年ロサンゼルスで、9歳の息子が失踪。5ヶ月後に戻ってきたのは息子を名乗る別人だったという実際に起きた衝撃の実話をクリント・イーストウッドが映画化したもの。タイトルのチェンジリングとは取り替え子を意味します。
アンジーの来日は、『Mr.&Mrs.スミス』以来3年ぶり。先日、アカデミー賞に夫婦でダブルノミネートされるなど、今最も影響力のある女優といっても過言ではないアンジーの会見ですから、マスコミもスチール120名、ムービー30名、その他記者も含めて300名以上集まりました。
受付時間が早かったので、開始まで長いこと待たされましたが、やっとアンジーが登場。ワンピースはラルフローレン。そのナイスプロポーションに会場の記者達の目は釘付けになりました。やっぱりオーラが違います。
会見中のアンジーです。椅子に腰掛けている様は、エレガントで、まるで王女様のようでした。これが一流のハリウッドスターの風格です。
フォトコールに答えて手を振るアンジー。映画ではヘヴィな役柄が多いですけど、本人はとっても愛嬌のある人なんです。僕がハッと思ったのは、お父さんのジョン・ヴォイトにそっくりだということ。そばで見ると、本当にお父さんにそっくりなんです。よくみると、腕のあちこちにタトゥーが彫ってありました。
以下、記者の質問と、アンジーの答えです。良い質問と良い答えばかりなので、ほとんどそのまま載せちゃいます。
記者「クリント・イーストウッド監督は"1シーン・1カット" という撮影スタイルで知られていますが、監督の凄さを実感したシーンは? また、監督についてどういう印象を持ちましたか」
アンジー「私は監督のことがとても大好きです。そして、とても偉大な方だと感じました。スタッフ・出演者一人一人を尊重してくれ、優雅でとても優しい偉大なリーダーでした。彼のためなら何でもしよう、何でもしたいと思わせる人でした。"1シーン1カット"という撮影スタイルには最初はとても驚きました。しかし、そのスタイルのおかげで1分1秒が大事だという意識になり、現場の空気は常に緊張感が溢れており、みんな真剣に取り組んでいました。この映画はとてもエモーショナルな作品なので、同じシーンを何度も演じさせられるより、クリントの撮影スタイルでかえって良かったのだと思いました。印象的なシーンや出来事はたくさんありましたが、クリントは監督としてどんなことも即決してくれ、とても嬉しかったです。どんな疑問や質問に対してその場で答えを出してくれるんです。それも笑顔で!」
記者「本作の衣装はとても素晴らしいものでしたが、演じている最中に心掛けていたことは何かありましたか」
アンジー「今回の衣装は20年代から30年代の女性のとてもエレガントなファッションです。当時の女性のシャイな部分を表現するために、帽子を深々と被りました。この当時の女性を演じるにあたって、帽子がとても役に立ちました」
記者「この映画で起きるようなことについて、社会活動に従事される立場での視点、母としての視点、二つの視点からご回答ください」
アンジー「出演の依頼が来たときにいろんなことを考えてしまい、最初は断りました。でも、何かずっと引っ掛かるものがありました。この物語は、喪失がどういう意味を持つのかということを考えさせたり、一人の弱い立場の人間が大きな制度を変えてしまうほどの影響力を与えることができるということを改めて気づかせてくれました。私は、クリスティンのような女性にインスピレーションを感じます。彼女のような強い女性が、世界各地で迫害を受けている弱い立場の女性や子供たちの状況を変えてくれると思っています。今回日本に来て、北朝鮮の拉致問題を知りました。演じた母親と同じような境遇にある拉致被害者のご家族に会ってみたいと思いました」
記者「あなたにはこれだけは信じて疑わないものはありますか」
アンジー「これは1つだけではありませんが、世の中の色々な出来事に対して、戦うべきことは何か、そして何が正義であるか、常に考え、それに対して信念を持って私は戦います。8年間国連難民高等弁務官事務所の親善大使を務めていますが、迫害されている女性や子供たちのために少しでも役に立てるよう、信念を持って取り組んでいます。国連難民高等弁務官の緒方貞子さんは私のヒーローの一人です」
記者「ジョン・マルコビッチとの共演はどうでしたか」
アンジー「彼はとても素晴らしく、知的な人でした。彼の長いスピーチのシーンがあったのですが、クリントは長いシーンが嫌いだから、演じたところでカットされると思っていました。でも、彼はそれを残したんです。その時クリントはジョンのことを”まるで蛇のようだね!彼の波長に飲まれてしまい、彼の思う通りにもっていかれちゃったよ”と言っていました。ジョンは催眠術師のような一面を持っていました」
記者「子役の演技から刺激を受けたことはありましたか?また、撮影中彼らとどのように過ごしましたか」
アンジー「共演した彼らはとても素晴らしい俳優でした。私の本物の子供を演じた子役は、撮影中現場に来ていた長男マドックスとテレビゲームをやっていました。でも、もう一人の子役との撮影は大変でした。私が彼に対して乱暴に振舞うシーンがあったのですが、そのときはとても気を遣いました。彼が怖がらないように注意しました。彼に向かって怒鳴ったりお皿を投げたりするシーンでは、目の前に彼がいると見立てて、私一人で彼なしで演じました。休憩中も彼が和めるよう一緒の時間を過ごしました」
記者「撮影中気を遣ったこと、苦労したことは?」
アンジー「クリスティンは始めと終わりでは全然違う女性となりました。最後にはとても強く逞しい女性へと変わりました。物語が進む過程で時々強くはなるけどすぐに挫折してしまう、そしてそれを乗り越えても更なる挫折が待ち受けている、そういうアップダウンの激しい彼女の人生を上手く演じられるか、とても気を遣いました」
先日の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』での夫ブラッド・ピットの会見は、会場もごちゃごちゃしていて、段取りも進行も滅茶苦茶。記者の質問もひどいものばかりで、話もかみ合わず、マスコミの間でもかなり評判が悪かったのですが、それに比べるとこのアンジーの会見はしっかりとまとまっていて、質問も回答も的確なものが多く、快適に進行していきました。夫よりも妻の方がしっかり者なのかも・・・。記者会見たるもの、常にこうありたいというお手本のような名会見といえるものだったと思います。
以上、現地レポートでした。(澤田)
『チェンジリング』は2月20日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー。
2009/02/02 2:49