Bordertown
2006/アメリカ/112分
出演:ジェニファー・ロペス アントニオ・バンデラス マヤ・サパタ マーティン・シーン ファン・ディエゴ・ボト ソニア・ブラガ フアネス
監督:グレゴリー・ナヴァ
製作:グレゴリー・ナヴァ、サイモン・フィールズ、デヴィッド・バーグスタイン
製作総指揮:ケリー・エプスタイン、トレイシー・スタンリー・ニューウェル、バーバラ・マルティネス・ジットナー 、フレッド・ウルリッヒ
脚本:グレゴリー・ナヴァ
編集:パドレイク・マッキンリー
音楽:グレーム・レヴェル
(データベース登録者:kira)
偏差値:58.6 レビューを書く
映画でなければ伝えられない真実 [85点]
アメリカの国境近くにあるメキシコの街フアレス。
北米自由貿易協定によりこの街にはマキラドーラと呼ばれる工場群が立ち並び、近郊の若い女性の安い労働力により成り立っている。
24時間の3交代勤務のため深夜に帰宅する途中で暴行され命を奪われる事件が後をたたず、政府の公式見解では被害件数は1993年から現在までの15年間で500件とされているが、実際の被害件数は5000件以上と推計され、犯人のほとんどは野放し状態となっている。
その取材を命じられたシカゴの新聞記者ローレル(J・ロペス)はかつての同僚で今は現地の新聞社で編集長となっているディアス(A・バンデラス)と共に取材に乗り出すのだか…
怖い作品である。
外貨獲得のためには国民の命が犠牲となることもいとわず事件を隠蔽しようとする政府や事業者と癒着し事実を報道しようとする現地の新聞社を取り締まる警察。
またその事実が世界に公表されることを良しとせず、見て見ぬふりをするばかりかシカゴの新聞社にまで圧力をかける大国アメリカのエゴ。
捜査をしない警察はあてにならないと行方不明になった少女の家族が砂漠を捜索し、無造作に埋められていた少女を見つける場面には心が痛む。
いままで娯楽性の高い作品が多かったJ・ロペスがメキシコで起きている未解決事件の多さに衝撃を受け初めて取り組んだ社会派サスペンスである。
彼女はこの作品でメキシコの工場群で働く女性の悲劇的な実態を広く世界に知らしめた功績から人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルより「2007年アーティスト・フォー・アムネスティ・アワード」を受賞しており、このことからもこの作品が単なるサスペンスものではないことを我々に教えてくれている。
2006年製作のこの作品はその内容から興業的に成功するとは思えないが、2年遅れではあるが日本での上映を実現させた配給会社には拍手を贈りたい。
海外の安い労働力に依存している我が国がこの作品に描かれているアメリカのような国でないことを切に願っている。
2008/11/25 22:38