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バンク・ジョブ

The Bank Job
2008/イギリス/ムービーアイ/110分
出演:ジェイソン・ステイサム サフロン・バロウズ リチャード・リンターン 
監督:ロジャー・ドナルドソン
http://www.bankjob.jp/

偏差値:59.0 レビューを書く 読者レビュー(3) 予告を見る


●封印された英国史上最大の銀行強盗事件―これは実話である。

●英国王室を震撼させたスキャンダル!衝撃のクライム・サスペンス、遂に解禁!

60年代スウィンギング・ロンドンの時代は終りを告げ、激動の70年代の幕開け―。ストライキ頻発、アイルランド紛争激化、といった騒然たる社会情勢の中、グラムロックの雄、T-レックスの“ゲット・イット・オン”がヒットチャートを賑わし、『時計じかけのオレンジ』の年末公開を控えた1971年ロンドン、英国全土を揺るがす一大事件が発生した―。

ベイカー・ストリートにある銀行の地下に強盗団が侵入、貸金庫内の数百万ポンドにも及ぶ現金と宝石類を強奪して行方をくらませたのだ。事件は数日間トップニュースとして報じられた後、しかし突如打ち切られた。それは英国政府からのD通告〈国防機密報道禁止令〉によるものだった。歴史上数回しか発令されたことのないこの完全な報道規制の裏には、英国政府がどうしても報じられてはならない秘密が隠されていた。その秘密とは、英国最大のタブー、王室スキャンダルだったのである・・・。

『バンク・ジョブ』は、現在では知る人も数少なくなったこの〈実話〉を、当時の関係者の証言を基に再現し、謎に満ちた事件の真相をリアリスティックに描いた衝撃のクライム・サスペンスだ。実行犯たちは、トンネルを掘って貸金庫内の金品を強奪したまでは良かったが、その中には英国王女のスキャンダル写真だけでなく、政府高官や裏社会の顔役、汚職警官らが預けていた公にできない“秘密”が山ほど隠されていたのだった。実はプロでもなんでもない寄せ集め集団だった7人の実行犯に、筋金入りのプロたちから容赦ない追手がかかる。一人、また一人と追い詰められていく犯人たちの運命は?そして奪われた“秘密”の行方は?犯人たちの命を賭けた駆け引きが始まった―。

主犯格のテリーにジェイソン・ステイサム。今やアクション大作の顔となった彼が、今回は派手なアクションを封印。妻子を愛するどこにでもいる中年男が、止むに止まれず犯罪に手を染めるこころの動き、また友を救うため必死に戦う姿は、ジェイソンがこれまで見せたことのない個性を見る者に強く印象づけるだろう。テリーを計画に誘うモデル、マルティーヌには『再会の街で』のサフロン・バロウズ。敵か味方か、その美しくミステリアスな存在感、60年代風ファッションの華やかな着こなしも見所の一つだ。その他『シリアナ』のリチャード・リンターン、『理想の女(ひと)』のスティーブン・キャンベル・ムーア、英国演劇界の重鎮デヴィッド・スーシェら、若手からベテランまで、その時代の空気を伝える登場人物を鮮やかに演じている。

監督は『世界最速のインディアン』が内外で高い評価を得たロジャー・ドナルドソン。多彩なキャラクターを描きわけながら、緩急自在にストーリーを進める語り口は、欧米の批評家たちから前作を上回る絶賛を集めている。関係者の証言を基に書き起こされた脚本は、60年代から現在まで活躍中のベテラン・コンビ、『アクロス・ザ・ユニバース』のディック・クレメントとイアン・ラ・フレネ。生粋の英国人ならではのユーモアや反権力志向を隠し味に、当時の社会や人々のありようを、その時代に生きてきた人間ならではの視点からリアルに捉えている。

つい最近、事件の関係者の関係者から、日本の配給会社に非公式に寄せられた情報によれば、『バンク・ジョブ』で描かれているエピソードは、当然映画的な脚色は施してあるものの、“9割が事実”とのことである。それを信じるか信じないかは見る者の自由だが、この映画が“強奪モノ”ジャンルの新たな規準点となる傑作となったことは間違いない。

11月22日(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー