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ブタがいた教室

2008/日本/日活/109分
出演:妻夫木聡 大杉漣 田畑智子 池田成志 原田美枝子 近藤良平 戸田菜穂 大沢逸美 ピエール瀧 清水ゆみ 甘利はるな 
監督:前田哲
原作:黒田恭史
主題歌:トータス松本
http://www.butaita.jp/

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星先生と子どもたちが出した結論とは!? 
あなたならPちゃんを「食べる」?「食べない」?

■INTRODUCTION

これは教育?素晴らしい授業!賛否両論を呼んだ実話の映画化

「食育」や「いのちの授業」が叫ばれる前、総合的学習時間もまだなかった1990年。大阪の小学校の新任教師がはじめた実践教育が、日本中に波紋を投じた。それは“ブタを飼って、飼育をした後、自分たちで食べる”というものだった。「Pちゃん」と名付けられたブタは、32人の子どもたちに愛され、家畜ではなくクラスのペットとなっていく。食べるか。食べないか。2年半の飼育の後、子どもたちの卒業を控えて、Pちゃんの処遇を巡った大論争が展開される。しかし、問題はそこで終わらなかった。その後、子どもたちを追ったドキュメンタリーが1993年にテレビ放送されギャラクシー賞奨励賞、動物愛護映画コンクール内閣総理大臣賞を受賞し大きな反響を呼んだ。視聴者からの反応は「残酷だ」、「それは教育ではない」という多数の批判的な声の一方で、教師の情熱と、子どもたちが自ら考えて真剣に事態に向き合う姿に心を打たれ、支持する人たちもいた。その一人が、本作の監督・前田哲。前田監督は10年以上前に見たドキュメンタリーの感動を胸に秘め、動物や草木はもちろん、人間の命についても、改めて考えることが必要とされている今、この新任教師が挑んだ試みを多くの人に伝えたいと映画化に挑んだ。


手渡された脚本は白紙・・・
物語の結末を知らなかった26人の子どもたちのリアルな感情の秘密

オーディションで選ばれた26人の子どもたちに手渡されたのは、子どもたちのセリフ部分だけが白紙で、結末が記されていない脚本だった。スタッフや、大人のキャストには通常の脚本が配布されており、撮影現場には「子どもの脚本」と「大人の脚本」が存在していた。それゆえスタッフや関係者は、余計な情報を与えないように、子どもたちと注意深く接した。オーディションからの180日間、モデルになった32人の子どもたちさながらに、26人の子どもたちは、ブタの飼育をしながら「ブタ肉は食べるけど、Pちゃんは?」を力の限り考え、物語としての結末を知らないからこそ自分の答えを見つけようと、思いや意見をカメラにぶつけた。「食べる13人、食べない13人」の真二つに別れ、時には議論が白熱して大粒の涙を流し、つかみ合いのケンカをしたこともあった。撮影を通して役を演じる子どもたちもまた、この授業を追体験したのだ。


妻夫木聡が体当たりで教師役に初挑戦!スタッフ・キャストも学びながらの現場

そんな子どもたちと、一緒に悩みながら成長をする新任教師・星先生を演じたのは今回教師役に初挑戦の若手実力派No.1俳優・妻夫木聡。カメラが回っていない時でも「星先生」と慕われ、撮影現場では子どもたちに優しく、時に厳しく「先生」として接した。そして、そんな6年2組の先生と子どもたちを支える校長役に原田美枝子、教頭役に大杉漣、同僚教師役に田畑智子と、強力な俳優たちが脇を固める。
撮影期間中、廃校になった小学校を借りて、子どもたち、キャスト、スタッフが毎日登校し、そして実際にブタを飼育した。作品に携わる全員が学びながら挑んだ本作。子どもたちの痛いほど真摯な瞳、言葉、そして強い思いは、時代が“いのち”、“食”、“教育”に改めて目を向けている今だからこそ、私たちの心を揺さぶらずにはおかないだろう。


■プロダクションノート

映画化までの、13年の軌跡

前田哲監督が、この“物語”の存在を知ったのは助監督時代の1995年に放送されたドキュメンタリー番組の放送だった。「最初はぶっとんだ事をする面白い先生もいるもんだな、と観ていたら、どんどん子どもたちと先生の姿に釘付けになって、心を鷲掴みにされていた」と振り返る。同時に「これを映画にしたい」という強い想いを抱いたという。まさにその瞬間に居合わせたのが、プロデューサーの一人、小川勝広だった。2人は当時、チーフ助監督と制作担当として映画の現場に携わっていた。その時、小川もまた「ブタを下級生に引き継いでいたら他の感動作品と変わらないが、最後の選択が強烈だった。何より黒田先生の試みは、いろんな人たちにチャレンジすることの大切さを伝えてくれるはず」と、前田監督と想いを一つにする。しかし、すぐに小川が映画化権獲得に動き始めるも、番組放送直後は教育委員会や学校にまで抗議や問い合わせが殺到するような状態で、黒田先生に連絡を取ることは困難だった。その後、2003年に、前田監督が書店で「豚のPちゃんと32人の小学生」を見つけた事をきっかけに改めて連絡を取り、映画化へ向けて動き出した。しかし、そこからも遠い道のりが続いていた。すでにドキュメンタリーとして存在する“物語”をどのような映画にするべきなのか、めまぐるしく変化する社会状況の中で今作る意味は、誰に向けて作るのか・・・、延々とプロデューサーと脚本家と監督は話し合いを続けたのだった。そして、07年3月、この企画に賛同してくれた妻夫木聡の先生役快諾で撮影スケジュールが決定した。

26人の子どもたちとの180日の授業

子どもたちのオーディションは、2007年10月から11月半ばまで一ヶ月半かけて催された。応募者数はプロダクション所属と一般公募を含めて約1300人。前田監督はその一人一人と会い、言葉を交わして「個性を持っている子、出来上がった芝居をしない子、自分の言葉を持っている子、言葉にできないが自分の考えを持っている子、感情を出せる子」などをポイントに一次審査、二次審査、三次審査、そして最終的に52人に絞り込んだ。A班B班の二クラスに分け、先生役である妻夫木聡を入れて学級討論会を開催。その様子を見ながら6年2組となる26人を選抜した。以後、11月中旬より、子どもたちは毎週土曜日曜にリハーサルを実施。毎回、異なる題材でディベートを行い、「相手に気持ちを伝えてみること、言葉として出してみることを養っていった」(前田監督)。また、妻夫木が審査委員長となってグループ対抗のカレー大会、Pちゃんの小屋作り体験を行うなど、一つのクラスとなるためのチームワークと先生とのコミュニケーションを固めていき、2007年12月には合宿を行う。その時に一度、本番さながらの「一年間飼ってきたPちゃんをどうするか?」のディベートを試みたという。「その時すでに、本当に自分たちがブタを飼っているような気持ちになってしまい、興奮して泣き出す子や、相手にくってかかる子など、感情を吐き出すピークを迎えてしまった。予想していたことで、しばらくクールダウンさせるために、ブタの話題は止めた。」(前田監督)。 

子どもたちの半数13人は、スーパーや肉屋に並ぶ“お肉”は、どこから来るのか?知らなかった。子どもたちは、撮影前に最後の通過儀礼として、食肉センターの見学を行う。見学後、「聞いて、聞いて」と、子どもたちはいろんな言葉を持って監督に殺到する。全く考えや意見が変わってしまう子が続出。しかし、不思議としばらくするとまた当初の自分の考えに戻っていった。
「なによりも、子どもたちが自分の“気持ち”を“言葉”としてしっかりと伝えられるようになったことがうれしかった。さらに、子どもたちは、撮影中も“変化と進化”をしていきましたね。6年2組で話し合う、卒業までにブタのPちゃんをどうするのか?と、撮影後、ブタをどうするのか?という現実と映画がシンクロし、子どもたちは、本当の意味で“命”とリアルに向き合うことになった。」(前田監督)リハーサル中に一度だけ、子どもたちとPちゃんを対面させ、クランクインする1週間前から本格的なブタの飼育を開始。脚本は、リハーサルや合宿で子どもたちが本音で語った“言葉”が、キャラクター作りやセリフに生かされ再構築された。そして08年2月14日にクランクイン。今は廃校である東京・北区の旧赤羽台東小学校を拠点に撮影が行われ、同年4月にクランクアップした。

〈学校でブタを飼うということ〉
 本作の主役は、なんといってもブタのPちゃん。劇中では1年間に渡ってPちゃんの成長を追うため、生後1ヶ月の幼ブタから約100?ある10ヶ月の大ブタまで11頭が用意された。そして製作チームの中には、調教担当の吉田信治を中心とした「養豚部」(制作・田嶋、助監督・茂木)が結成された。メンバーは撮影中の約2ヶ月間、ブタが体調を崩すなど万が一の事態に備え、用務員室に寝泊まりし、縁起をかついで食事の”ブタ断ち”をしながらブタと共に生活をした。またスタッフ全員に、養豚部が作成したブタに関する豆知識から飼育するに当たっての注意事項を綴った冊子が配布された。「幼ブタは寒さに弱いので、体調管理に一番気を遣いました。エサは幼ブタは飼料やリンゴ、芋を蒸かしたものを。その他のブタは、近所の小中学校から頂いた残飯の中から脂モノを除いて与えています。つまり、人間と同じ食べ物を食べているので糞も匂います。でも子どもたちが当番制で毎日、世話を手伝ってくれたので助かりました。最初は『臭い』と言っていたけど、段々、愛着が沸いてきたのか、当番ではないにもかかわらず『きょうは早く来たから』と手伝ってくれたり。糞尿の掃除も普通にこなすようになりました」(吉田)。劇中で、Pちゃんは子どもたちとサッカーもすれば、階段登りやお座りなどもする。これも撮影前から吉田が、大勢のスタッフに囲まれて動く事に慣れさせ、調教をしたたまものだ。「犬の調教と同じで、例えばサッカーボールを鼻で触ったらエサをあげるを繰り返すと覚えてくれます」(吉田)。ブタの意外な芸達者ぶりも必見だ。

11月1日(土)よりシネ・リーブル池袋、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

何としてもグランプリを取りたい『ブタがいた教室』

何としてもグランプリを取りたい『ブタがいた教室』

2008年10月25日(土)渋谷にて、『ブタがいた教室』の記者会見が行われ、前田哲監督と、主演の妻夫木聡が登壇した。


ブタがいた教室

ブタがいた教室

http://www.butaita.jp/

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