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The Poseidon Adventure
1972/アメリカ/117分
出演:ジーン・ハックマン アーネスト・ボーグナイン レッド・バトンズ キャロル・リンレー ロディ・マクドウォール 
監督:ロナルド・ニーム

(データベース登録者:ハローメロウ

偏差値:59.6 レビューを書く

上には命がある [90点] [参考:1]

このレビューはネタバレを含みます

これは牧師役のジーン・ハックマンが船尾への脱出を説得する時に言った言葉で、本作品の中で私が一番好きな台詞である。

残念ながら映画館ではなくTVの洋画劇場(確か月曜ロードショー)とその後DVDでしか鑑賞したことはないが、生きるために力を合わせて困難に立ち向かう迫力は十分に伝わってくる。

豪華客船が転覆し、天地が逆になった船内からの脱出という設定は当時は斬新であった。

冒頭、大晦日のパーティーと前後して主要な登場人物の職業やこれまでの生き方が丁寧に描かれており、これがその後の脱出劇にうまくいかされている。

TVでは何度か放映されているが、初回放映以外はこの人物紹介の部分がカットされ、いきなり転覆したように記憶しているので、TVのカット版しか観たことのない人には是非DVD等で完全版を観ていただきたい。

名場面はたくさんあるが、文字通り息詰まる場面は水中で足を挟まれたジーン・ハックマンを助けに老齢のシェリ・ウィンタースが命がけで潜って行く場面で、何度観てもこちらも息を止めて観いってしまい苦しくなって来るほどである。

牧師のジーン・ハックマンと刑事のアーネスト・ボーグナインとの確執も船尾へ向かう選択肢は正しいのかと終盤まで観客の不安感を持続させるのに効果的で、上手い脚本である。

ラスト間際、ジーン・ハックマンはアーネスト・ボーグナインに全てを託し、自ら水中に没して行くが、初めてこの作品を観た時は生きることに誰よりも前向きであった彼のこの行動の理由が理解出来なかった。

しかし何度も観なおすうちに、あれは神が与えた試練に対し牧師である自分が犠牲となって他の者を救おうとした殉教であることが分かってきた。

リメイクの「ボセイドン」はオリジナルのドラマ部分を極力削ぎ落とした見せ場の連続で作られており、それなりに楽しめるのだが、オリジナルのように心にずしりと来るものがない。

ドラマよりも視覚重視となった時代の流れなのかも知れないが、本作品は今観なおしても心に響くパニック映画の秀作である。

なお、本作品の豪華客船ボセイドン号の船長は「裸の銃を持つ男」のレスリー・ニールセンであるが、彼が船長でなければボセイドン号は転覆しなかったのでは、などと考えるのは私だけであろうか(笑)

2008/10/14 23:04 (2009/11/07 06:31修正)

kira

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