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巴里祭

1932/フランス
出演:アナベラ ジョルジュ・リゴー ポーラ・イルリー ポール・オリヴィエ レイモン・コルディ 
監督:ルネ・クレール

(データベース登録者:ちりつも

偏差値:62.4 レビューを書く

これぞ巴里! [93点] [参考:1]

※ネタバレを含むレビューです。
古き良き時代の仏映画。
第1章、巴里祭の前後。
花売娘のアンナとタクシーの運転手のジャン。
アンナは、可憐な花売娘だが素直じゃない。
ジャンがダンスに誘っても「気が向いたら」とそっけない態度。
ダンスをしても突然「踊りたくない」と困らせる。
おまけにジャンの仲間とダンスをしてしまう。
なかなか小悪魔ぽい。

にわか雨で、ダンスは中断。
近くの家の門の前で雨宿りをする2人。
雷の音で思わずアンナはジャンに抱きつく。
ジャンはアンナにキス。
怒るアンナだが、その時また落雷の音!
飛びつくアンナ。
いつしか2人は恋人同士に。

翌朝、アンナは母の具合が悪く、今夜の巴里祭に行けない事を告げにジャンのアパートへ。
ジャンはいない。代わりに女の服や小物がちらかっていた。
そこにジャンの昔の女のポーラの写真が。
誤解し部屋を出るアンナ。

階段の下にそのポーラが上がってきてアンナは隠れる。
そんな事とは知らないジャン。
アンナをダンスに誘う。
拒むアンナに「自分はからかわれてたのか」と思い、ポーラとヨリを戻す。

アパートから出て行ったジャンとポーラ。
2人の恋は2日で終わる。

そしてここがこの作品の良さ。
詩が流れる。

※巴里の裏街 日は暮れる
夜の夢が咲く時 恋の夢が破れる※

運命は一瞬にして 希望を砕く
なじり合い、喧嘩 
彼は彼女から離れていった
別の娘が腕の中  語らぬ恋の秘め事を
知っていたのだろうか
※繰り返し


第2章、自動ピアノの音が鳴る居酒屋。

居酒屋で働くアンナ。
ジャンはタクシーの運転手をやめ、ポーラと窃盗一味の仲間に。
仲間は居酒屋を襲う。再会する2人。
「もしかして、私に会いにきたの?」と以前とは違う素直なアンナ。
「いや、通りかかっただけ。」
まさかこの店に泥棒にきたとはいえない。
一味に襲われるアンナ。
助けるジャン。
店の自動ピアノが鳴り、主人がかけつけ逃げる仲間。
アンナはジャンを逃がすがクビになる。

再会は苦いものとなったが優しく詩は流れる。

希望のない日々の後、ある夜再会した2人
微笑みはしなくても 2人の目が感じとる
きっと幸せになれる事を
言葉はかわさなくても2人の目が語る
巴里の裏町 夢見る夜
燃える心が恋の夢を呼びさます
幸せな日々は過ぎ去り
全ては夜の空
省略...。

第3章、アンナはまた以前の花売り娘に。
ジャンは元のかたぎのタクシーの運転手。
アンナがレストランに行くと、中で老紳士が泥酔し拳銃をもって人々を脅かしていた。
アンナの機転で何事も起こらずに済む。
お礼に老紳士はアンナの花をたくさん買う。
おかげでアンナは町の中、花車を牽く。

そこへ、一台のタクシーが突っ込んできて!
運転手はジャン。
再度の再会だ。

タクシーに乗っていた男、アンナをかばう男、そして事故を見に寄ってくる野次馬達、見詰め合う2人。
そして、にわか雨。
初めて踊ったパーティーと同じ家の門で、雨宿りをする2人。

と以上だが、この映画はつとにシンプル。

シーンの終わりに詩が挿入され、微妙に違う繰り返しの映像美の連続だ。
これが実に心地良い。

初め、中盤、終わりと2人を巡る人々、雨、車、花等、全てが巴里の魅惑的なセットの中きっちり計算されている。

まさにルネ・クレールマジック!
「巴里祭」は目でみる美しい暗唱のような作品。

2008/10/08 02:36

ちりつも

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