しあわせのかおり
2008/日本/東映/124分
出演:中谷美紀 藤竜也 田中圭 下元史朗 木下ほうか 山田雅人 甲本雅裕 平泉成 八千草薫
監督:三原光尋
http://www.shiawase-kaoru.jp/
【Introduction】
古都・金沢の港町にある、小さな中国料理店。年老いた中国出身の名料理人が、丹精込めて作る料理は、お客さんに“しあわせをもたらす”逸品ぞろい。ある日突然、病に倒れた店主に協力を申し出たのは、幼い娘を抱えた若い女性。最初はぎこちない名人と弟子の関係は、やがて確かな絆へと変わっていく……。
映画『しあわせのかおり』は、観た人に心がほっとするようなやさしさと、あたたかい感動を伝えてくれる珠玉の人間ドラマだ。
主演は、『嫌われ松子の一生』や『自虐の詩』などで、数多くの主演女優賞に輝く若き実力派・中谷美紀と、数々の映画で重厚な存在感を発揮して、強い印象を残すベテランの藤竜也。傷つき、人生につまづきながらも、凛とした強さを内に秘めた貴子と、実直で不器用だが、大きな心を持った王さん。静かだが力強い名演を見せる中谷と藤が、血のつながりを越えた“娘と父”のドラマをじっくりと見せてくれる。脇を固めるのは、フレッシュな魅力を発揮する田中圭、物語にしっとりとした厚みを与えている八千草薫。
監督は、藤と組んだ『村の写真集』(03年)で第8回上海国際映画祭のグランプリを獲得した三原光尋。『村の〜』のテーマでもあった「親と子の関係」を、本作では形を変えて追及。万人の心に強く訴える“人間の絆”の物語を、ハートフルに描いて涙を誘う。
また、料理への深い造詣を活かして、オリジナル脚本でのぞんだ本作には、50種類以上もの中国料理のほか、地元・石川県の食材を使用した創作料理も登場。特訓を積んだ中谷と藤の料理の腕前をとらえた、臨場感のある映像も見応え充分。日本海を背景にした港町の風景や、オールロケ撮影による中国・紹興のロケーションも、しみじみとした情緒にあふれている。
【Story】
デパートの営業職として働く山下貴子(中谷美紀)。ある日、デパートへの出店を交渉するために、金沢の町外れにある小さな中国料理店「小上海飯店」に出向く。店主は、職人気質の料理人・王(ワン)さん(藤竜也)。出店の話はにべもなく断られるが、貴子は昼の定食を食べることに。名物の蟹しゅうまいを始めとする、思わず顔がほころぶ料理の数々に驚きを隠せない貴子は、その日から店の常連客となる。王さんとは一言も会話を交わすことはなかったが、料理を通して、二人の心には何か温かいものが生まれるのだった。
厨房で突然、王さんが倒れ、貴子は病院に見舞いに駆けつける。笑顔を見せる王さんだったが、医者からは、麻痺が残る体では以前のように料理をすることは難しいと告げられる。退院して、重い中華鍋を振ることができず、ひとり苦悩する王さんに、貴子は生きていればちょうど同じ年齢の、洋食のシェフだった父親の姿を重ねる。一方、中国・紹興出身の王さんもまた、妻と娘を疫病で亡くすという悲しい過去があった……。
さまざまな思いを胸に、貴子は会社を辞めて、料理人として店を手伝うことを決意。その真剣なまなざしと熱意に動かされて、王さんも心を決める。
女手一つで幼い娘を育てながら、料理人を目指す貴子の修行生活は、決して楽なものではなかった。だが、貴子のがんばりを見守る、店に出入りする農家の青年・明(田中圭)らに支えられて、一歩ずつ、着実に料理人として成長していく。同時に、貴子は王さんとの確かな絆を感じていた。
そんな中、貴子は地元の謝恩料理会に出場するが、不運が重なり、結果は大失敗。2度と厨房には立てないと落ち込んでしまう。一方、王さんは、古くからの知人で加賀友禅の工房を営む百合子(八千草薫)から、跡取り息子が結婚することになり、両家の食事会を小上海飯店で開催したいと打診される。自分には無理だとこばむが、食事会の料理人を貴子に任せるという名案を思いつく。
人生を一歩前進させるために、王さんは貴子を故郷・紹興の旅へといざなう。王さんの料理人としてのルーツや、人生の真実を肌で感じる貴子。伝説の料理人の帰郷を祝う町の人々に、王さんは貴子を“娘”として紹介する。それを聞いた貴子は、一人前の料理人になる決意を新たに帰国。再び特訓を開始する。食事会の日は、刻々と近づいていた……。
2008年10月シネスイッチ他にてロードショー