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初恋の想い出

情人結
2005/中国/ブロードメディア・スタジオ/112分
出演:ヴィッキー・チャオ ルー・イー 
監督:フォン・ジェンチイ
http://www.hatsukoimovie.jp/

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ヴィッキー・チャオ、ルー・イー競演。
80年代の中国を舞台に贈る、一途な想いを美しい映像で描いたフォ・ジェンチイ監督最新作。


詩情に満ちあふれた映像美で人間の機微を描き出し、『山の郵便配達』(99)では、中国のアカデミー賞ともいえる金鶏賞最優秀作品賞及び、最優秀主演男優賞を受賞。『故郷の香り』(03)では、金鶏賞最優秀作品賞、最優秀脚本賞の他に、第16回東京国際映画祭コンペティション部門最優秀作品賞、優秀男優賞を獲得。国内外を問わずに高い評価を得ているフォ・ジェンチイ監督が、80年代の中国を舞台に、"宿命的な愛"と"運命の皮肉"に翻弄される一組の男女を描く珠玉のラブストーリーに挑戦。一途な恋を美しい映像で綴る本作は、初恋のほろ苦い想い出が胸に迫る、切なく純粋な恋愛映画に仕上がった。

ストーリーの舞台は、1980年代の中国。家の干渉が個人に及ぼす影響が非常に強かった時代。チー・ラン(ヴィッキー・チャオ)とホウ・ジア(ルー・イー)は家族と共に官舎に住んでいた。幼馴染みのふたりは、成長するにつれ、いつしか惹かれあい、将来の愛を誓い合うようになった。しかし、ふたりの家同士の"ある因縁"が、皮肉にもふたりの運命を弄んでいく...。

「若いふたりに80年代の雰囲気をどう演じさせるのか?」
監督は、まず主演のふたりと共に、当時と現代の違いを分析した。
「今の若い人たちは、家族に反対されて恋人と別れるということが理解できないと思う。でも、当時は家族の干渉が恋愛だけではなく多岐に渡っていた」。これが中国の伝統的道徳観であり国情だった。このような時代背景から、主人公たちは、愛と家族の板挟みに悩み、家族も捨てられず、駆け落ちもできなかったのだ。
映画で主人公のふたりは、『ロミオとジュリエット』を読み、映画やバレエを観に行く。古い物語であるからこそ、ふたりは生きる道しるべを見つけ、耐え続けられた。そんな主人公ふたりの愛に対する一途さは、現代の人々が学ぶべきものだと監督は語る。「社会の進歩にしたがって、人々は感情の渦から逃げ出せなくなっている。しかし、本当の愛は、そんなに簡単で手近なものだろうか」。

本作の結末は、観る人によってハッピーエンドとも切ないラストとも受け取れる。監督は「時には涙を流さないことが涙を流すことより感動するのだ、と思った記憶がある」と話す。表現しようとしてもしきれない、人の感情のその境地が、最も感動的なものなのだと。そんな監督の細やかな感性が映画にも反映されている。最後のシーン、ふたりはまったく喜びの情を示さず、カメラに向かって涙をこらえている。これは、「長い間の忍耐がこの時に感極まるに違いない」と考えた結果だった。ふたりの初恋が想い出に変わった瞬間...。だからこそ、ふたりの静かな表情が、観る者の胸に迫ってくる。

監督は、『山の郵便配達』(99)、『故郷の香り』(03)など、国際的にも評価の高いフォ・ジェンチイ監督。主演のふたりには、中国で圧倒的な人気を誇る『少林サッカー』(01)や『レッドクリフ』(08 )の公開が控えるヴィッキー・チャオと『セブンソード』(05)、『ジャスミンの花開く』(05)のルー・イー。中でも、ヴィッキー・チャオは、18歳の少女が30歳の女性に成長する過程を、瑞々しくも表情豊かに演じ、本作で第8回上海国際映画祭主演女優賞を受賞した。

恋愛中の人、かつて恋愛をした人たちが、さまざまな思いで自らの愛を噛みしめ、見直す機会を与えてくれる本作。映画を観終わって、自分の人生を振り返る、そんな余韻に浸る、大人のためのラブストーリーが誕生した。

10月4日(土)、渋谷シアターTSUTAYAにてロードショー!