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1957/アメリカ
出演:タイロン・パワー マレーネ・ディートリッヒ チャールズ・ロートン エルザ・ランチェスター 
監督:ビリー・ワイルダー 

(データベース登録者:ちりつも

偏差値:62.9 レビューを書く

情婦 [99点] [参考:2]

このレビューはネタバレを含みます

1952年のロンドン。
金持ちの未亡人を殺した容疑で逮捕されたレナード・ボール(タイロン・パワー)は、高齢だがロンドンきっての法廷弁護士ウィルフリッド・ロバーツ卿(チャールズ・ロートン)に弁護を依頼する。
レナードに有利な証言ができるのは内縁の妻クリスチーネ・ヘルム(マレーネ・ディートリッヒ)だけだ。
しかし“検察側の証人”として法廷に立ったのはそのクリスチーネだった・・・。
法廷ドラマの大傑作。見た人はけっして結末を教えてはいけない作品。

アガサ・クリスティが自らの短編小説を舞台劇としてその戯曲「検察側の証人」が原作です。
まず、冒頭の出だしが面白いです。
弁護士のウィルフリッド卿は退院したばかりで病み上がりで酒と葉巻を禁じられているのに、自分の体をあまり大事にはしようとはしません。
こうるさい看護婦から逃れようと懸命ですが、なかなか手厳しい看護婦でウィルフリッド卿が葉巻をステッキで隠したりしてることもすべて彼女にはお見通しです。
この看護婦役のエルザ・ランチェスターがとても存在感があります。
彼女とウィルフリッド卿との会話がテンポよく進行していきます。
そんなコミカルチックな展開の中に突如、ヒロインの“情婦”ことクリスチーネ役のディートリッヒが登場します。
スーツ姿のディートリッヒ、とても素敵でうっとりしてしまいます。
この時の彼女の実年齢は50代後半。
しかし、そんな年齢を感じさせない色っぽさが漂ってます。
ちなみにこの作品で殺害された未亡人の年齢は56歳。
はっきりいって見た目もオバサンです(役の人ごめん・・・)。
でもディートリッヒの辞書に“オバサン”という言葉は永遠にありません。

作品の後半は法廷シーンに変わっていきます。
殺された未亡人のギスギスした家政婦の証言とウィルフリッド卿のおかしな会話とか、ココアの水筒で薬を飲むはずが、水
筒の中身は果たしてココアなのか?それともブランデーか?と法廷の観客席で眼を光らせて見ている看護婦とか・・・。
相変わらずコミカルな展開が続きます。
そんな中、またしてもディートリッヒが登場します。
それも敵方の“検察側の証人”として現れます。
彼女が現れるシーンはいつも周りの空気を「おおっ!」と驚嘆させます。
まったくもって登場するだけでカッコよいのです。
ここで、妻のクリスチーヌはびっくりするような大胆な証言をします。
それは…あっと、これ以上ネタをバラしてしまうと、この映画の面白さが台無しになってしまうので、ここであらすじは終わりにしておきます。
見たい方はどうか作品をご覧になってください。

ディートリッヒの独特の美しさはこの作品でも堪能できます。
夫のボールと戦時中のドイツでの出会い、アコーディオンを弾く歌姫のディートリッヒ。
しっかり美声も披露してくれてます。
その時に、スラックスを兵隊たちに破られてしまって、片足の太ももがあらわになった姿なんてもう、ドキドキです。
演技、小道具、ストーリー、会話の上手さ、そしてキャスト等、サスペンス&ユーモアを随所に見せる、ビリー・ワイルダーならではの演出が本当に見事な作品だと思います。

そして弁護士と看護婦の役を演じたロートンとランチェスターは実生活では夫婦だとのこと。
なるほど役柄でも息があってるようです。
この作品でそろって2人ともアカデミー主演男優賞、助演女優賞にノミネートされました。

2008/07/05 20:14

ちりつも

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