イースタン・プロミス
Eastern Promises
2007/イギリス・カナダ/日活/100分
出演:ヴィゴ・モーテンセン ナオミ・ワッツ ヴァンサン・カッセル アーミン・ミューラー・スタール シニード・キューザック イエジー・スコリモフスキー
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
製作:ポール・ウェブスター、ロバート・ラントス
脚本:スティーヴ・ナイト
撮影:ロナルド・サンダース
音楽:ハワード・ショア
偏差値:58.8 レビューを書く 読者レビュー(2) 予告を見る
誰もが心奪われる圧倒的な人間ドラマ、ついに誕生
表裏の世界に生きる男女
出会うはずのなかったふたりを運命が引き寄せる
ロンドンのある病院に身元不明のロシア人少女が運び込まれた。彼女は女の子を産み落とした後、息をひきとってしまう。手術に立ち合った助産師のアンナは、少女が残したロシア語の日記を手がかりに、その身元を割り出そうとする。
そんなアンナの前に現れたのが、謎めいた雰囲気の運転手ニコライだった。
ロシアン・マフィアのために働く彼をアンナは警戒するが、ニコライは窮地に陥ったアンナをいつも助けてくれる。
やがて、日記を通じて少女とロシアン・マフィアとの関係が浮かび上がり、<法の泥棒>と呼ばれるおそろしい犯罪組織がからんでいたことが分かる。すでに後戻りできないほど、危険な場所に足を踏み入れていたことに気づくアンナ。
マフィアと少女をめぐる衝撃の真実とは? そして、ニコライが抱える大きな秘密とは? けっして出会うはずのなかった男と女の運命が絡み合い、濃密で圧倒的な人間ドラマが誕生した。
アカデミー賞(R)候補となったヴィゴ・モーテンセンが見せる
キャリア最高の名演と多彩な共演陣
全身黒ずくめのロシアン・マフィアの運転手ニコライ役を演じているのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ヒストリー・オブ・バイオレンス』で知られる実力派男優ヴィゴ・モーテンセン。前科のあるロシア人ニコライを演じるため、実際にロシアを訪問し、役のためリサーチを行い、ロシア訛りの英語を見事にマスターした。
また、体の刺青(タトゥー)で人物の地位や犯罪歴などがすべて分かるというロシアン・マフィア独自の設定をリアルにするため、タトゥーに関する研究も重ねた上で今回の役に臨んだ。
公衆浴場でのファイトシーンでは全裸もいとわず、迫力ある体当たりの演技を見せる一方、アンナと気持ちを通わせる場面では優しい顔ものぞかせる。謎めき、複雑な個性のニコライ役を完璧に演じ切り、見事、今年のアカデミー賞(R)主演男優賞候補になった。
そんな彼に次第に心ひかれる助産師アンナを演じて、透明感ある美しさを見せるのは『21グラム』でオスカー候補となった実力派女優ナオミ・ワッツ。悲しい過去を背負いながらも、小さな命のために奔走するヒロインの心の動きを繊細に表現し、モーテンセンと最高のコンビネーションを見せてくれる。
マフィアのボスの息子で、情緒不安定なキリルを演じるのはフランス出身の国際派男優ヴァンサン・カッセル(『オーシャンズ13』)、マフィアのボスとして威厳を誇る彼の父親セミオン役を演じるのは、『シャイン』でアカデミー賞(R)助演男優賞にノミネートされたアーミン・ミューラー=スタール、アンナの母ヘレン役に英国のベテラン女優のシニード・キューザック(『Vフォー・ヴェンデッタ』)、アンナの伯父ステパンには、ポーランド出身の伝説的な映画監督で、『夜になるまえに』などで俳優としても活動するイエジー・スコリモフスキーと、クローネンバーグがこだわりぬいたベテランたちが顔を揃え、物語に重厚感を与えている。
鬼才デヴィッド・クローネンバーグ 新境地にして最高傑作
同じ男優を2度続けて起用したことがほとんどない現代の鬼才監督、デヴィッド・クローネンバーグ。そんな彼が前作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』で名コンビを見せたヴィゴ・モーテンセンを、再び主役に起用したのが今回の作品。
主演男優がそのドラマの鍵を握るクローネンバーグ作品だが、ヴィゴとの出会いを通じて、その内容もかつてのシュールな作風から、よりリアルな方向へと変わってきた。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』では、アメリカの小さな町に住む一家の秘められたドラマを見つめたが、今回、焦点を当てるのはロンドンのもうひとつの顔。
『堕天使のパスポート』でアカデミー賞(R)脚本賞候補となった新鋭脚本家、スティーヴ・ナイトのユニークなシナリオと出会い、大いに触発されるものがあったという。「ロンドンの犯罪をめぐるカルチャーが描き出され、その強烈な世界にすぐに引き込まれた。とても現代的だったからね」と脚本の印象を語る監督。
ナイトは東欧の人身売買の実態を探り、そこに関係した犯罪組織<法の泥棒>のことを調査するうちに、今回の映画のアイディアを得たという。
撮影監督のピーター・サシツキー、美術のキャロル・スピア、編集のロナルド・サンダース、そして、名作曲家のハワード・ショアなど、おなじみのクローネンバーグ・ファミリーが集まり、ロンドンの闇世界が、リアルで、シャープな映像美で描きだされる。
海外ではクローネンバーグ監督の新境地として高い評価を受け、今年のゴールデン・グローブ賞の作品賞や英国アカデミー賞の最優秀英国映画賞などにノミネートされ、昨年のトロント映画祭では、見事、観客賞に輝いた。
6/14(土)、シャンテ シネ、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
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