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ONCE ダブリンの街角で

Once
2006/アイルランド/87分
出演:グレン・ハンサード マルケタ・ウルグロヴァ ヒュー・ウォルシュ ビル・ホドネット 
監督:ジョン・カーニー

偏差値:59.0 レビューを書く

ありふれたものこそ美しい。 [80点] [参考:1]

※ネタバレを含むレビューです。
監督ジョン・カーニー
主演はグレン・ハンサード。

ダブリンの街で歌うストリートシンガーと、チェコ移民の既婚者である花売りの女性の小さな物語。

男の夢を応援し、背中を押す彼女の気持ちに、切なさがこみ上げた。




この映画のミソは決して『ドラマチックではない』ところ。

あまりに大げさな展開やベタなロマンチックストーリーより、ずっとリアルで人間らしいと私は思った。

そんな繊細な描写が所々に散りばめられて
『普通っぽさ』や、アコースティックな音楽の挿入、翳りのある映像や色合いも演出の一部に混じっている。
それがアンニュイな雰囲気を作り出していて、視覚と聴覚からくる心への振動を巧みに導いていた。

特に歌が良い。
この作品のファンなら必ずサウンドトラックCDを手に入れているだろう。

展開へのドキドキ感がなかろうとも、希望を見いだしながら夢や愛に向かって変化していく主人公の煌めきは
見たものに小さな蛇口から湧き出るような勇気を与えてくれるはず。

ちょっとした出来事の積み重なりや、気づかない愛しさの中で進むべき未来に押し出されて行く感覚を不思議と思い出させてくれるような。。

そういう意味でハートフルで優しい流れを味わう鑑賞時間を、自分に与えられた。

じんわり心に広がる余韻を楽しめる作品です。

2010/09/18 02:46

寺山百合子

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