スミス都へ行く
1941/アメリカ/129分
出演:ジェームズ・スチュアート ジーン・アーサー トーマス・ミッチェル クロード・レインズ エドワード・アーノルド
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
撮影:ジョセフ・ウォーカー
音楽:ディミトリ・ティオムキン
(データベース登録者:ちりつも)
偏差値:64.6 レビューを書く
出でよ!「正義一徹」の政治家。 [99点]
※ネタバレを含むレビューです。
アメリカの理想主義を描きあげたキャプラ監督の政治コメディ。
女性・恋愛映画といえるジャンルではないが、私がここで注目したのは、主人公スミス(ジェームズ・スチュワート)を支える秘書役のミス・サンダース(ジーン・アーサー)が知性と教養に溢れた素晴らしい女性なので、彼女の視点から見た。
サンダースはとても有能な女性政治秘書。
ただ、秘書になったものの、政界の汚さを嫌というほど味わっているので、自分の仕事に対する理想は既に失いかけている。
おまけに、今度は政治のノウハウも知らない田舎者のスミスの秘書にされてしまったてうんざり。
スミスはの取り柄といえば子供たちに絶大な支持があるだけの男だ。
だが、スミスが単なる“幼稚な理想主義者”だけではないことに、徐々にサンダースは気がついていく。
「少年達のために故郷にキャンプ場をつくる法案」作りのための2人のシーンは特にロマンチックだ。
スミスは瞳を輝かせて、自分の故郷の美しさを彼女に熱く語る。
「美しい言葉」や「美しい心」は知らず知らず人の心にうつっていく。
スミスの純粋無垢な心が、忘れかけていたサンダースの、政治への「理想」を思い起こさせるのだ。
と同時にサンダースは別の事も気がついてしまう。
こんなにも理想と正義感に溢れたスミスをあの汚職にまみれた上院議員ペイン達が放っておくはずはないだろうと・・・。
案の上、スミスの法案のキャンプ場の場所はペイン達の不正な利益を得るダムの予定地だったために、無残にもスミスは彼等の仕組んだ罠にかかって、議員生命を抹殺されかけてしまう。
スミスは信頼していたペインに裏切られて、また自分の理想が現実の中では余りにも“空虚な絵空事”だった事実に心はズタズタにされてしまう。
故郷に帰る前に一目と思い、彼が寄ったリンカーン記念館。
敬愛するリンカーン像の前で、スミスが打ちひしがれている時、後をつけて来たサンダースがスミスを励ます。(このシーンは泣けちゃうね。)
この時、打ちのめされたスミスにとってサンダースはきっと女神のように見えたことだろう。
そして、この後のシーンは作品の最大の見せ場でもある、23時間半にも及ぶスミスの法廷での大演説へとなだれ込んでいく。
仕事のできる女性が愛する男性の窮地を救う。
サンダースのスミスに対する“愛の表現”は炊事でも洗濯でもなく“知性”です。
そこがすっごくカッコいいなって思う。
「対等」の男と女の関係。
現代の女性に共感しそうな恋愛関係ではないだろうか。
サンダースを演じた少し特徴のあるハスキー声のジーン・アーサーがとってもチャーミング。
また、長い手足をもてあましているような気弱そうな風貌のジェームズ・スチュワート。
彼の頼りない風貌が逆に正義感あふれた熱血青年の押しつげがましさを感じさせないところも実に気持ちよかった!
こういう情熱の政治家が実際にいたら一票投票するなぁ。
2008/05/17 19:08
ちりつも
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