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ノー・マンズ・ランド

No Man's Land
2001/フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロヴェニア/98分
出演:ブランコ・ジュリッチ レネ・ビトラヤツ フイリプ・ショヴァゴヴイツチ カトリン・カートリッジ サイモン・キャロウ ジョルジュ・シアティディス サシャ・クレメール セルジュ・アンリ・ヴァルック ムスタファ・ナダレヴィッチ 
監督:ダニス・タノヴィッチ
製作:フレデリック・デュマ/マルク・バシェ/セドミール・コラール
脚本:ダニス・タノヴィッチ
撮影:ウォルター・ヴァン・デン・エンデ
美術:ドゥシュコ・ミラヴェツ
衣装:ズヴォンカ・マクツ
編集:フランチェスカ・カルヴェリ
音楽:ダニス・タノヴィッチ
録音:アンリ・モレル

(データベース登録者:frost

偏差値:63.0 レビューを書く

愚かな戦争の縮図 [95点] [参考:1]

ボスニア兵チキとセルビア兵ニノが取り残された塹壕の中は、そのままボスニア紛争の縮図になっている。

二人は互いに形勢を逆転しながら、相手に非を認めさせたりタバコを奪ったりする。実際の戦争では同じく互いに形勢を逆転しながら虐殺が起きたり略奪が起きたりしている。そして、結局は銃を構えた方が、相手を退け自分の主張を通すことができる。

紛争を監視している国連防護軍が両軍から助けを求められて塹壕に急行するが、現場指揮官の正義感とは裏腹に上層部は建前により救援を中止させる。現場指揮官はマスコミを利用して、上層部にルールを曲げさせなければ正義を行うことが出来ない。

そういう総てがおかしくなってしまった状況の中で、身体の下に地雷を仕掛けられて動けないツェラだけが真っ当な理性を取り戻しているのが皮肉で辛辣。チキとニノの争いを「泥沼はたくさんだ」と制するツェラが横たわったまま全く動けない姿は、実際の戦争において真っ当な理性を保っている人たちの立場と葛藤を連想させる。

戦争を痛烈に批判する映画はいくらもあるけれど、その中でも極めて切れ味鋭い作品。戦争の馬鹿馬鹿しさをごく狭い場所と時間に凝縮してわかりやすく見せてくれる。

2008/05/16 09:56

frost

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