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アラバマ物語

To Kill A Mockingbird
1962/アメリカ/129分
出演:グレゴリー・ペック メアリー・バダム ロバート・デュヴァル 
監督:ロバート・マリガン
製作:アラン・J・パクラ
原作:ハーパー・リー
脚本:ホートン・フート
撮影:ラッセル・ハーラン
音楽:エルマー・バーンスタイン

(データベース登録者:frost

偏差値:55.0 レビューを書く

全米No.1ヒーロー アティカス・フィンチ [75点]

黒人差別を扱った社会派ドラマ。封建的な村人の偏見と闘いつつ黒人被告人のために奔走する正義の弁護士アティカス・フィンチ(グレゴリー・ペック)の姿を、6歳の娘スカウトの視点で描いています。

ちなみに、アティカス・フィンチは全米映画協会(AFI)の”映画のヒーローベスト100”の第一位にランクされていました。並み居るアクションヒーローを差し置いての一位ですからたいしたものです。

オープニングが凝ってますね。子供の鼻歌をバックに人形や時計の入ったおもちゃ箱、クローズアップで追うビー玉、原題にもなっているものまね鳥の絵などこれだけで一つの短編作品のような美しさ。ストーリーの暗示とともに「子供の頃のよき思い出」へのイントロとして実に見事。

美しいイントロに導かれて始まる物語の前半は、となりに住む怪人ブーロバート・デュバル)を巡る子供たちの冒険。それぞれちょっと生意気で好奇心旺盛でとても子供らしく微笑ましい。また、子供たちから観た平和で古めかしい田舎町の様子が感情豊かに描かれています。

後半は被告人の黒人をめぐる住民とのトラブルから法廷劇、サスペンス絡みのクライマックスへと前半とは違った趣でストーリーは進みます。グレゴリー・ペックが完全無欠の正義の味方を演じるとあまりにはまりすぎて遊びがなくなり、個人的にはつまらなく感じます。しかし、この作品では物語全体が成長したスカウトの回想という形になっているため、あくまでも正義を貫く父の姿もいやみにならず馴染んできました。結果的にはグレゴリー・ペックの特徴をうまく生かした演出になっていました。

恐ろしい噂のみで姿を見せないブーは、白人世界にはびこる黒人蔑視の偏見の象徴なのでしょう。ブーを通していかに偏見というものがつまらないものかをすっきりと見せており、メッセージ性という意味でも非常に感心させられました。

2008/05/06 10:18

frost

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