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脳男

2013/日本/125分
出演:生田斗真 松雪泰子 二階堂ふみ 太田莉菜 江口洋介 
監督:瀧本智行

(データベース登録者:まっつぁんこ

偏差値:53.8 レビューを書く

ダークヒーロー誕生 [80点] [参考:1]

俺〜の名は、俺〜の名は、ハカ〜イダ〜。
脳男と聞くとまず頭に浮かぶのはキカイダーの宿敵ハカイダーですが、それとは似ても似つかぬダークヒーローの誕生です。

生田斗真が演じる脳男と呼ばれる謎の男は天才的な頭脳と脅威的な身体能力を持っていますが、人間らしい感情はおろか痛覚さえ持っていません。

そしてある事情から悪に対し徹底的にそれを排除するようになっているのですが、感情がない分、その方法も半端じゃありません。

今までにない感情を持たないダークヒーローに生田斗真が扮していますが、感情を一切持たないことに戸惑うこともない難しい演技を上手くこなしています。

それに対し敵であり、感情の赴くままに行動する凶悪な爆弾魔に扮している二階堂ふみもいいですね。

初めて彼女を観たのは「ヒミズ」で、演技は上手いのですが顔立ちが宮崎あおいに似ていてちょっと損をしているかなと思いました。しかし本作では宮崎あおいなら絶対にやらないような超悪役を嬉々として演じていて、女優としてこの先がどうなるかますます楽しみになりました。

この二人に刑事の江口洋介と精神科医の松雪泰子が絡んできますが、二人の常軌を逸した演技の迫力の前ではやや控えめな感じがしました。
まあ本作の主役は脳男と爆弾魔なのでそれを食わないように脇役に徹したということでしょうね。

脳男の設定はよく考えるとかなり無理があるのですが、次々と起きる事件とその意外な展開で観ている間はそれを考える暇を与えてくれません。

アクションもなかなか迫力があって、映画としては楽しめるのですが、それにしても脳男と言うネーミングは何とかならなかったのでしょうかね。
江戸川乱歩の小説じゃないんだからと思っていたら、 原作は江戸川乱歩賞を受賞していたんですね(^^;)

日本に生まれた新たなダークヒーローの活躍に次回作でも期待したいです。

余談ですが、本作を観ていて松雪泰子の神経質そうな顔立ちがテリー・ガーに似てるなと思ったのは私だけでしょうか(笑)

2013/02/24 20:15

kira

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原作を超えたか? [55点] [参考:1]

※ネタバレを含むレビューです。
原作は2000年に乱歩賞を受賞し、評判の高かった首藤瓜於氏の作品である。
乱歩賞もパワーダウンしていて殆どスルーしているのだが、「脳男」は感性にひっかかるものがあり、リアルタイムで読んだ。





原作を読み、これから映画を観る方は特に、以下ネタバレしますので真っ新な状態で観たい方はご注意ください!





その時、一番印象に残ったシーン。
それは、緑川による愛宕医療センター襲撃のクライマックス。
茶屋、鷲谷と鈴木一郎が本館のメインフロアに通じる通路に面した部屋に玲子という子供が爆弾つきで監禁されているのを発見。
まわりに細いワイヤーがはりめぐらされており、常人がトラップを回避して玲子を救出するのは不可能。
鈴木一郎は「脳男」らしいロボットのような動作で玲子を救出するのである。

「鈴木が右手をあげ、前方にのばした。顔を下に向け、頭と腕とを同じ高さにした。それから右足をもちあげて膝を曲げ、曲げた膝を前につきだすようにして床と水平に回転させはじめた。鈴木の足は見えない障害物を避け、ゆっくりと九十度回転して体の前にでた。ふつうの人間なら片足で立っているだけでもむずかしい姿勢を少しの動揺もなく保っていることにも真梨子は驚かされたが、しかしさらに驚いたのは、鈴木が後方に残った手足を動かすとき、手足のほうには目を向けることさえしなかったのにもかかわらず、顔よりも後方にある手足がまるで独立した生き物のように目指す方向を探りながら仕掛け線を避けて、なめらかに床に着地するのを見たときだった。鈴木の動きは、あらかじめ一連の動作をプログラムされた機械のように正確で寸分の狂いもなかった。部屋の中央を過ぎ、さらに進んでいく鈴木の一挙手一投足を真梨子は固唾を呑んで見守った。」

ワイヤーをくぐり抜けて玲子にたどりつき、彼女を抱えてふたたびワイヤーを抜けて戻ってくる。
「脳男」で最も印象に残ったこのシチュエーション。
まるごとカットされていました。
映像化が難しかった故なのか、「脳男」のキモが抜けてしまった。(笑)

原作では緑川は男だったものが、妙な女子二人組におきかわり
染谷将太のエピソードがつけくわわっていた。
あまり成功していたとは思えないが、それでもそこそこ面白い映画になっていたのは原作の力だろうか?

脳男Ⅱは指し手の顔という題名で既に刊行されている。
こちらもなかなか面白い作品で、敵役がパワーアップしているので映画化したら面白い作品になると思う。
ぜひ生田くんに続投してもらって、今度は原作に忠実に映画化してもらいたいものだ。

2013/02/19 19:04

まっつぁんこ

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