ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


わんわん物語

1955/アメリカ
出演:バーバラ・ルディ ラリー・ロバーツ ペギー・リー 

製作:ウォルト・ディズニー、ロイ・O・ディズニー
監督:ウィルフレッド・ジャクソン、ハミルトン・ラスク、クライド・ジェロニミ

偏差値:65.0 レビューを書く

『ピノキオ』と並ぶアニメーションの最高峰 [100点] [参考:1]

僕がこの映画を見たのはおよそ15年前。たしかレンタルビデオ店でVHSを借りて見た。『わんわん物語』というタイトルからくるほのぼのとしたイメージの映画と違って結構ヘヴィな内容だったと記憶していた。15年前に僕が個人的につけていたノートには、『わんわん物語』は満点をつけていた。当時の僕の感動ぶりは今もはっきりと覚えていて、これを見たときにはディズニーの映画の中でも一番面白い映画だと友達みんなに言っていたくらい。最も有名な犬映画『101匹わんちゃん大行進』よりも断然こっちの方が好きだった。

ところが、今回15年ぶりに鑑賞してみて、まるでこれが初めて見るくらい何もかも忘れていたことに驚いた。良かったということだけ覚えているけれど、内容を忘れていた自分にびっくり。犬2匹がスパゲティを食べるシーンは覚えているけど、主役はオス犬の方だと記憶していた。メス犬が主役なのに。お陰ですべてが新鮮だった。

一番「おおお」と思ったのは、これのスクリーンサイズがシネマスコープだということである。VHSのときはテレビサイズだった。もともとこれはディズニー初のシネマスコープの映画として製作された記念すべき作品だったのである。しかも調べてみたら、『ダンボ』とかそのあたりのディズニーの名作連発最盛期の頃から製作が始まっていて、数十年もかけてようやく完成した作品だった。ディズニーはこの映画を「シネマスコープで描くアニメ」として大々的にPRしていた。現在ではむしろシネマスコープサイズは不自然なくらい横長に感じてしまうものだが、画面いっぱいに広がるローアングルのアメリカの古き良きクラシックな街並みは素晴らしく、ディズニーのこの作品にかける熱意は、『ピノキオ』や『ファンタジア』にも劣らなかったと考えられる。実際『ピノキオ』よりこっちの方ができがいいくらい。

女性キャラの歌のほとんどをペギー・リーが歌っているところもこの映画を名作にしていると思う。僕もペギー・リーはCDを持っていたので結構好きな方である。作詞も全曲ペギー・リーが担当しているが、『ライオン・キング』でエルトン・ジョンが全面協力したように、本作では当時のスター歌手ペギー・リーが全面協力して本作を作り上げているのである。

レディという一匹のメス犬が人間に飼われ、トランプというオス犬と出会うことで、人間社会から追い出されて、様々な経験を積みながらも幸せをつかむという、人間社会にも通じる「成長」のドラマだと言えるが、レディの目を通して描かれる視点のなんという鋭さか。そして彼女の目から見るキャラクターの一匹一匹がなんと生き生きと見えるか。改めて映画製作者ウォルト・ディズニーの偉大さに感服させられた。

2012/05/04 03:19

シネマガ管理人

参考になりましたか?

トラックバックはこちらのアドレスから受付しています。トラックバックについて