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2011/日本/129分
出演:役所広司 小栗旬 高良健吾 臼田あさ美 古舘寛治 黒田大輔 森下能幸 高橋努 嶋田久作 平田満 伊武雅刀 山崎努 
監督:沖田修一
製作:池田宏之、籏啓祝、油谷昇、佐藤政治、阿佐美弘恭、喜多埜裕明
プロデューサー:春藤忠温、佐藤美由紀、大森氏勝
脚本:沖田修一、守屋文雄
撮影:月永雄太
美術:安宅紀史
編集:佐藤崇
音楽:omu-tone

偏差値:60.7 レビューを書く

雨でも…きっと晴れるさ [90点] [参考:1]

3年前に妻を亡くした無骨な木こりと気弱な若手映画監督が山村のロケで出会い、交流していくうちにお互いが自分らしさを取り戻していくお話です。

役所広司は前作の山本五十六とは正反対の役柄ですが、無骨で人のいい木こりの克彦を好演しています。実生活では大工仕事が趣味でmyチェーンソーを2つ持っているそうなので山本五十六よりもハマり役だったのかも知れませんね。

また小栗旬も映画に対する情熱は人一倍強いのに思ったことを口に出せないため自分の考えとは違う方向に撮影が進んでいくのにどうすることも出来ない気弱な映画監督の幸一になりきっています。

劇中で幸一が撮影しているのはなんとゾンビ映画なのですが、今まで映画とは無縁だった克彦や山村の人々がよくわからないうちに撮影に協力する羽目になり、次第に映画作りにハマっていく様子が妙に楽しくてつい笑みがこぼれました。

克彦には息子(高良健吾)がいますが仕事が長続きせずブラブラしているため顔を合わせると喧嘩になり親子の間がギクシャクしています。

この息子の名前が文字は違っても映画監督の幸一と同じ読み方の浩一だったのと年齢が近かったのとで克彦は幸一に対し無意識に父親のような感情を抱いていたのではないでしょうか。

息子の浩一も心の中では何とかしなければいけないと焦ってはいても本心を上手く伝えられないのはやはり父親似なんでしょうね。

克彦は幸一と出会い彼の本心を聞きながら接しているうちに息子の浩一との距離も次第に縮まっていきます。また幸一も克彦と出会い心の内を伝えることにより映画監督としての自信を身につけていきます。その2人の姿が自分のことのように思え、観終わった時に元気をもらえた作品でした。

本作にはもう1つの楽しみ方があります。劇中のゾンビ映画の撮影風景を本作が反対側から撮影しているのはちょっと不思議な感覚で、自分が幸一の監督するゾンビ映画のスタッフになったような気になります。

特に監督ができる喜びよりもその重圧から逃げようとする幸一にスタッフの一人が言う「お前は監督ができるんだから。」は映画監督を目指しながらも夢がかなわなかった数多くの映画人の声だったようで心に響きました。

また、監督が自信なさげだとスタッフは好き勝手に振る舞い、監督かしっかりしていればその号令1つでスタッフもいい仕事をしようと動きだす、それは映画に関わる仕事だけではなくどんな仕事でも一緒なんだなと思いました。

前作の『南極料理人』とは全く違った環境での楽しい映画を見せてくれた沖田修一監督の次回作が楽しみです。

2012/04/09 14:57

kira

参考になりましたか?

なんで映画の中の映画って、いつもお決まりのようにゾンビ映画なんでしょうかね。

シネマガ管理人 (12/04/09 14:58)

あっ、そう言われるとそうですね。みんな一度はゾンビ映画を撮ってみたいんでしょうかね(笑)

kira (12/04/09 14:59)