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Random Harvest
1942/アメリカ/127分
出演:ロナルド・コールマン グリア・ガースン フィリップ・ドーン 
監督:マーヴィン・ルロイ

偏差値:64.6 レビューを書く

クラシック大メロドラマ [99点] [参考:1]

このレビューはネタバレを含みます

「心の旅路」というタイトル通りこの作品は記憶喪失になった一人の男の心の中の幸福を求めて旅する映画です。
この映画を何度か見てますが、いつも見終わった後は「スミシィ、やっとわかったのね!」「ああ、ポーラ良かったね!」という気分になります。
ここまで献身的に忠実に愛する妻なんて今時、めったにいないのでは?と現代人の冷めた私は思ってしまうわけです。

彼女(ポーラ)はいつもスミシィを助けます。
記憶を失った時も、自分の仕事を捨ててまでスミシィをかくまうのです。
そして、スミシィの記憶が蘇って自分と子供を捨てた(?)後も何年もスミシィの居場所を探すのです。
そしてある日、新聞に愛する夫の写真が!と書きましたが、映画の中ではそれらのシーンはでてきません。
後のポーラの言葉でその苦労がわかります。(ホント、涙ものなのよね)

映像では、スミシィはチャールズの記憶が蘇ったあとは、チャールズ側の人々との関わりだけを見せるので、私たちは「ポーラはどうしてるのだろう?」と思うわけです。
そこで突然、ポーラは、スミシィの会社の秘書として再登場します。
それもマーガレットと偽って、本名を明かさずにスミシィに赤の他人として接するのです。
このシーンが素晴らしい!この映画の中で、一番「アッ」と驚くシーンです。
おかしいのはスミシィです。
いくら記憶を失ったとはいえ、目の前に愛する妻がいるのに記憶が蘇らないのですから・・・。
が、記憶喪失だから仕方ないのでしょう。

ポーラを演じたグリア・ガースンはこの役柄にぴったりです。
少し、つんと澄ました顔立ちですが、母性的な温かさも持ち合わせている品性豊かな女優さんです。
対する、ロナルド・コールマンもサイレント時代からの2枚目を演じていて、品性があります。
元のチャールズの記憶が蘇った時から一気に、気弱なおどおどしたスミシィが、立派な紳士として変化する姿は、思わず「同一人物か?」と思うくらいときめきます。
正直、この映画では年齢が老けすぎている気もするけれど、彼のダンディさでよし!としたいです。

この映画で2人以外に、注目した役ではスミシィ(チャールズ)を愛する義理の姪のキティという若い女性が出てきます。
いってみればポーラの仇役なのですが、キティ演じるスーザン・ピータースがとても若々しい美しさと愛らしさで、スミシィの心をつかみかけます。
普通なら敵役なので、ムカつくところなのですが、キティは聡明さも兼ね備えてたので、スミシィとの結婚を断念します。教会のシーンは、キティが逆に哀れで可愛そうなほどでした。

スーザン・ピータースはこの役で、15回アカデミー助演女優賞にノミネートされました。
ちなみにグリア・ガースンは同年「ミニヴァー夫人」で主演女優賞を受賞してます。
いってみればこの年はガースンの当たり年って感じです。

「心の旅路」はクラシックメロドラマ作品としては大満足の作品だと思います。

2008/04/27 20:03

ちりつも

参考になりましたか?

二人が新婚生活を送った小さな家に記憶を戻しつつ確かめながら記憶喪失の夫・スミシィが家の敷地に入るときに開けるドアの「キー」という錆付いた音で完全に過去の記憶がよみがえるシーン。記憶喪失になって、本家に戻ってから数十年間、持ち続けた新婚時代の小さな家のドアキーで家のドアを開けた瞬間、二人の愛し合っていた記憶が蘇るラストシーンがこの映画の最大のクライマックスシーンと私は確信しています。

kimkim08 (10/01/23 21:57)