Transamerica
2005/アメリカ/103分
出演:フェリシティ・ハフマン ケヴィン・ゼガーズ フィオヌラ・フラナガン エリザベス・ペーニャ キャリー・プレストン バート・ヤング バート・ヤング
監督:ダンカン・タッカー
製作総指揮ウィリアム・H・メイシー
(データベース登録者:peco)
偏差値:65.0 レビューを書く
障害は笑って乗り越えろ [90点] [参考:1]
このレビューはネタバレを含みます
デスパレートな妻たちで人気のリネット役のフェリシティ・ハフマンが主演している映画である。この映画でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。夫で俳優のウィリアム・H・メイシーは、製作総指揮として参加している。
リネットのキャラクターが定着しているため(日本の女優さんでいうと高畑淳子さんと雰囲気似ている)今回の役柄がどういう風に映るのかちょっと心配していた。
が、そんな心配はご無用。
男性から女性へ変更した(しようとしている?)微妙な役をこなし、最後まで女性であろうとする男性を演じきっていた。
この映画は性同一性障害(トランスセクシャル)を持った男性が突然存在が発覚した息子とともにアメリカ大陸横断(トランスアメリカ)するロードムービーである。
もともと、顔のつくりがキリッとした印象のためか、男性が女性を装っているという不自然さが超一級品の仕上がりである。感心したのは、不自然なメイクとカツラようなヘアスタイル、女性らしい華奢さを無視したファッション。いかにも女装という感じではないけれど、近いのにどこか惜しい!という微妙なズレ感、不自然感があるのがすばらしいのだ。ハフマン自身は女性なのでこの不自然感を出すのが逆に難しかったのではないだろうかと想像する。どの場面でも微妙に周りと浮いていてそれを常に悟られまいとする一生懸命さが可愛らしい反面はしばしに出る男性ぽさにちょっと笑いをさそうようになってる。
この映画には性同一性障害が抱える重いテーマがある。だが、根底は明るく健全なたくましさが備わっているため、笑ってもいい安心感があるのが特徴だ。それは、主人公の息子の置かれた劣悪な家庭環境にあっても失われていない素直さでもよくわかるし、主人公にカミングアウトされて母親一人大げさに騒ぐ様がコミカルに書かれているところでもわかる。
ただ、息子が主人公に告白してしまうシーンはちょっと残念だった。知らないとはいえ血縁者にせまるのはちょっとピンとこない。恋愛対象として惹かれていく変化もイマイチ読み取れない。でも、その直後、実の母親と主人公の本来の親子関係を取り戻す大事な場面につながるため、それなりにインパクトのある伏線が必要だったのかなという気がした。
一見暗くなりそうな問題を抱えた話だが、どこか明るくて真面目なのにコミカル・・・この映画の家族のように多少の問題はあれども全部ひっくるめて受け止めてあげたい作品だ。
2010/10/15 21:23 (2010/10/16 09:23修正)