終着駅-トルストイ最後の旅-
The Last Station
2009/ドイツ・ロシア/ソニー・ピクチャーズ
出演:ヘレン・ミレン クリストファー・プラマー ジェームズ・マカヴォイ ポール・ジアマッティ アンヌ・マリー・ダフ ケリー・コンドン ジョン・セッションズ パトリック・ケネディ
監督:マイケル・ホフマン
http://saigo-tabi.jp
「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」など、ロシアの生んだ不世出の文豪レフ・トルストイ。比類なき文学的才能、家柄、作家としての名声、莫大な印税と多くのものに恵まれたトルストイは、晩年、財産分与などで妻ソフィヤとトルストイ信奉者たちが溝を深めていくことに悩まされ、82歳にして突然家出。小さな駅で最期を遂げる。今年は奇しくも没後百年。移ろいやすい現世の幸福の底に沈む“愛、家族、嫉妬心、裏切り、理想主義、自己発見”という普遍的なテーマと、トルストイの死の謎に迫る、感動の物語がここに誕生した。
本作は、対照的な2つの愛の物語――48年間連れ添ったトルストイとその情熱的な妻ソフィヤとの稀有な愛、そして理想主義的な若き秘書ワレンチンと彼同様トルストイの教えに心酔する無神論者の教師マーシャとの間に芽生えつつある愛――を核に描かれる。 世間では悪妻としてその名を轟かせたソフィアだが、夫婦の本当の心は二人にしかわからない。妻ソフィヤをよりクローズアップして描くことよって、トルストイの人間くさい歴史の影に隠れていた一面が、大いなる魅力となって見る者に迫ってくる。
キャストとして、“世界三大悪妻”の一人である妻ソフィヤ役をオスカー常連女優のヘレン・ミレン(『クィーン』)、トルストイ役をクリストファー・プラマー(『サウンド・オブ・ミュージック』『インサイダー』) 、トルストイの秘書ワレンチン役をジェームズ・マカヴォイ (『つぐない』)、トルストイに傾倒するチェルトコフ役をポール・ジアマッティ (『シンデレラマン』『サイドウェイ』) 、忠実なトルストイの娘サーシャ役をアンヌ=マリー・ダフ (『マグダレンの祈り』)、そしてワレンチンが愛するマーシャ役をケリー・コンドン(『ダニー・ザ・ドッグ』)が演じている。 ヘレン・ミレンとクリストファー・プラマーはそれぞれ、本作で第82回アカデミー賞®主演女優賞、助演男優賞にノミネートされた。
監督・脚本は、『素晴らしき日』 『ソープディッシュ』 『恋の闇 愛の光』などのマイケル・ホフマン。アンドレイ・コンチャロフスキーの製作総指揮のもと、自然の美しいドイツのザクセン=アンハルト、ザクソニー、チューリンゲン、ブランデンブルクで撮影を行った。 マイケル・ホフマン監督はこの作品で、「愛と共に生きる難しさと、愛なしで生きることの不可能を描くことに挑戦した」という。「これは文豪トルストイを描く映画ではなく、愛の難しさを描いた映画なのだ」と。初めての愛に踏み出そうとする若者の目を通して、長く連れ添ったカップルの愛を見つめる---誰にでも一度は記憶のある視点で描かれている作品だからこそ、この映画は人々の共感を呼ぶのだろう。
STORY
ロシアの偉大な文豪レフ・トルストイの献身的な妻、情熱的な恋人、ミューズ、そして協力者として、50年近く結婚生活を送ってきたソフィヤ伯爵夫人の世界が、ある日突然ひっくり返る。新たに起こした宗教の名のもとに、トルストイが爵位や財産、そして家族さえも捨て、貧困と菜食主義と独り身になることを選んだのである。
トルストイの信頼する弟子であり、自分が忌み嫌うウラジミール・チェルトコフが、新しい遺書に署名するよう夫を説得したらしいと知ったソフィヤは、激しく憤る。その遺書には、トルストイの作品に関する権利を、家族ではなくロシア国民に与えると書かれていたのだ。彼女は、自分のものだと信じているものを失うまいと、知恵や魅力を総動員して猛然と戦う。そして「その行動が過激になればなるほど、トルストイの輝かしい遺産にダメージを与えるだろう」というチェルトコフの言葉が説得力を増すことになっていく。
この地雷原ともいえる関係に、トルストイを崇拝する世間知らずの新しい助手、ワレンチン・ブルガコフが迷い込む。彼は、策略家チェルトコフと復讐に燃える傷心のソフィヤが、互いに相手の利益を損なおうとする争いのなかで、まずチェルトコフに、次にソフィヤに駒として利用されそうになる。そしてワレンチンの人生をさらに複雑なものにするのが、マーシャへの情熱的な想いであった。トルストイの唱える理想主義の信奉者であるマーシャの、セックスや愛に対する型破りな考え方に、ワレンチンは惹きつけられるが、同時に困惑する。トルストイのいう理想の愛に心酔する一方で、彼の波乱万丈な結婚生活に戸惑うワレンチンには、現実の世界における複雑な愛の対処術はまだ会得できない。
一方、自分を取り巻く環境があまりにも複雑になりすぎたことから、世界一の有名人トルストイは、ついに82歳にして、真夜中に家出を図る。そしてソフィヤは取り巻きたちが押し留めるのを振り切って、トルストイが病に伏すアスターポヴォ駅へと特別列車を仕立て、ロシアを横断する。
二つのロマンス――ひとつは始まったばかり、そしてもうひとつは終わりに近づいている――物語である『終着駅-トルストイ最後の旅-』は、愛と共に生きることの難しさと、しかし愛なしで生きることなど不可能だということを、ユーモアと感動にあふれた多面的で哀切なストーリーとして描いている。
今秋、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 他全国順次公開!