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まぼろしの市街戦

Le Roi Du Coeur
1967/フランス/102分
出演:アラン・ベイツ ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド ジャン・クロード・ブリアリ フランソワーズ・クリストフ 
監督:フィリップ・ド・ブロカ

偏差値:62.4 レビューを書く

もう一度観たい作品 [95点] [参考:2]

※ネタバレを含むレビューです。
高校のとき日曜洋画劇場で1度だけ観た作品です。

正義とはなにか、戦争とはなにか、狂気とはなにか、そして本当に狂っているのは誰か、といろいろなことを考えさせられました。

翌日、学校で映画好きの友人と、昨日の「まぼろしの市街戦」よかったよなあ、と話したことを今でもはっきりと覚えています。

特に鳥かごを持って素っ裸で精神病院の前に立っていた主人公のラストシーンは忘れられません。

2008/04/30 23:47 (2009/11/07 06:37修正)

kira

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まぼろしの市街戦 [90点] [参考:2]

「リオの男」(1963年)、「カトマンズの男」(1965年)などの、ジャン=ポール・ベルモントとのコンビ作で、一躍世界的に有名になった娯楽派の映画監督、フィリップ・ド・ブロカ。彼が長年共同で脚本を書いてきた脚本家ダニエル・ブーランジェとともに、1967年に仕上げた作品がこの「まぼろしの市街戦」です。荒唐無稽なブラック・コメディの体裁を借りながらも、戦争の狂気と人間の存在の不確かさを痛烈に皮肉った映画ですね。
この作品は、公開当初、従来のブロカ調の軽妙なアクション・コメディを期待した観客には受け入れられず、特にフランスでの興行成績はふるいませんでした。加えて、戦争を笑いものにするというブラックさが、批評家の受けをも低下させてしまったようです。ところが、ベトナム戦争が泥沼化の様相を呈しはじめていたアメリカでは、ヒッピー・ムーヴメントの勃興と共に、学生達の間で熱烈な支持を集めました。特にラストの、すっぽんぽんで鳥かごを持ち、精神病院に入ろうとする主人公の姿は、当時の反戦を訴える学生達のイコンにまでなったそうです。そして現在では、ブロカ監督の作品の中でも傑作のひとつと数えられるようになったのです。
劇中の、戦争の傷跡も生々しい爆撃された街なかの光景と、その中をこの世の春と闊歩する狂人たちの楽しげな様子の対比は、言葉を失うほど強烈です。一度ご覧になっていただきたい。まるで夢を見ているような風景なのです。色とりどりの衣装をひらひらさせて、壊れかけた広場を踊り狂う人たち。彼らを狂っているというのは簡単です。が、美しい村をボロボロにするまで破壊していく戦争の狂気は、どこにも閉じ込められることなく許されています。一体どっちが『狂人』なのか。爆弾をあちこちの国に投げつけるのが、大国の“遊び”であるなら、それをこそ“禁じられた遊び”とするべきでしょう。
最後のシーンで『公爵』が病院の窓辺でこうつぶやきます。「諸君、この世で最上の楽しみは、この病室の窓辺から眺める景色だ」
“正常”とされる外の世界は危険が一杯、猛獣が跋扈する辛い世界。うっかり出て行けばあっという間に殺されてしまう。だから、この病院で窓から美しい景色を眺めるのが一番だよというセリフは、戦争がなくならない当時の情勢への痛烈な皮肉です。これはそのまま、今現在でも通用する言葉でしょう。悲しいことですね。今だって世界のあちこちで紛争が後を断たないのですから。

2008/04/24 20:26

豆酢

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