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Surrogates
2009/アメリカ/ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン/89分
出演:ブルース・ウィリス ラダ・ミッチェル ロザムンド・パイク ボリス・コドジョー ジェームズ・クロムウェル ヴィング・レイムズ 
監督:ジョナサン・モストウ
http://www.movies.co.jp/surrogate/

偏差値:54.1 レビューを書く 解説

もうひとつの恐るべきアバター [75点] [参考:2]

この作品で描かれている身代りアンドロイド『サロゲート』にリンクし別の自分として生きる姿は『アバター』と同じ設定だが、場所が近未来の地球だけにこちらの方がゾッとしたものを感じた。

サロゲートを憎悪する人も少なからずいるが、そんな人が住む一部の地域を除いたほとんどの場所に溢れるのはサロゲートだけなのも怖い設定である。

現実の人間はベッドに横たわったまま家から一歩も出ることはなく、仕事も遊びもサロゲートに任せ、それとリンクすることによりその経験だけを共有しているが、果たしてそれで人間として生きていると言えるのだろうか。

人々が代理人としているサロゲートは全てが長身でスマートで若々しく、実際の自分とはかけはなれた姿をしているところが、時折出てくる本当の姿をより哀れに思わせる。

物語は本来なら安全装置に守られ身の危険がなくサロゲートとリンクしているはずの人間がサロゲートとともに殺害される謎を解き明かすSFサスペンスものであるが、上映時間が90分弱と短いのが幸いしたのかテンポよく進んでいく。

その謎に挑むのは我らがブルース・ウィリスであるが、彼ももちろんサロゲートを使っており、髪はフサフサ、肌はスベスベで体型もスリムなのが妙に笑える。

『ベンジャミン・バトン』で若き日のブラッド・ビットを再現したのと同じメーキャップやCGによるサロゲート・ウィリスは、スベスベすぎて人工的に見える肌の質感がサロゲートらしさをより強調している。

早々にサロゲートが使えなくなると生身のブルース・ウィリス本体の登場となるが、サロゲートとは全く異なる容姿の上に生身では人混みの中を満足に歩けなくなっているのには驚かされた。

SFサスペンスものなので人々を恐怖に突き落とした犯人は誰か、そしてその理由は何かを解明するのが物語の核となっている。

しかしそれだけではなくここに描かれている他人はおろか愛すべき妻との会話すらお互いのサロゲートを介してしか出来ない世界は、現在のそして近い未来のネット社会のあり方を問う問題作ではないだろうか。

サロゲートによる虚構の姿なしでは生きていけない人々が大勢いる世界は、今のネット社会を皮肉った究極の未来像なのかも知れない。

2010/02/23 19:48

kira

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