2009/日本/東宝/114分
出演:松たか子 浅野忠信 室井滋 伊武雅刀 光石研 山本未來 鈴木卓爾 小林麻子 信太昌之 新井浩文 広末涼子 妻夫木聡 堤真一
監督:根岸吉太郎
原作:太宰治
http://www.villon.jp/
偏差値:58.5 レビューを書く
タンポポのような1筋の誠実を… [80点] [参考:1]
このレビューはネタバレを含みます
太宰治の生誕100周年にちなんだ作品。
私は太宰の原作を読んでいません。その目線で以下を書きます。
佐知の変化と不変、大谷の死に魅せられながら生きていくしかない現実を詩的にそして明快に描いた作品です。
太宰の文学的世界観を丁寧に演出しているのが、好感をもてました。そのあたりはセリフなんかにもよく出ています。しかし、演出に苦労しているなぁと感じる部分もありました。
大谷が秋子と心中未遂をするシーンですが、大谷は薬を飲んだ後、森の木々の間から見える空を見上げて、目を閉じます。のちにその現場に来た佐知は同じように死に惹かれますが、空を見上げ思いとどまります。その後、佐知はある決意をし、行動に移すのですが…。
同じ景色を見てもその人によって感じ方は変わるものです。小説であれば、その人物に応じた描写をすることで心象を表すことができますが、映画ではなかなかそうはいきません。同じ風景は同じように見えてしまいますから。このあたりよほど映画にのめり込み、登場人物と自分(観客)が重なっていないと分かりづらいですね。
個人的には映画の導入部の大谷が駆けてくるシーンがまずグッと来ました。太宰の世界を描いた作品ということで、観客もいろいろ不安やら期待やらが混在する中、その不気味さを全て背負って駆けてくる大谷(浅野忠信)の映像は非常に美しく映画にすんなり入れました。
あと、椿屋の感じが良いですね。入り浸れる居酒屋はよいものです☆
「女には幸も不幸もありません。」「男にあるのは不幸だけです。」…ほんと鬱ですよね^^
なんだか映画で一気に観てしまうよりは、途中で止めて、ゆっくりと観たい作品だなぁと思いました。
連想作品:「めぐり会う時間たち」
「奇跡の海」(なんとなく…)
2009/11/01 12:54