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2009/日本/東京テアトル
出演:片岡愛之助 海老瀬はな 江守徹 阿藤快 藤田朋子 津村鷹志 木津誠之 ふせえり 
監督:古波津陽
脚本:古波津陽、浜頭仁史
撮影監督:辻健司
美術:磯見俊裕
http://aitech.ac.jp/~tikujo

偏差値:57.1 レビューを書く

見事なり段ボール城 [80点]

タイトルから戦国時代に城を造る武将か大工の話だとばかり思っていた(それは『火天の城』か。)が、いざ映画が始まると予想とは全く違う現代の話であったのに驚いた。

何だか『山形スクリーム』にも似た導入部に期待が半分と舞台が現代では本格的な殺陣が観られない失望が半分という複雑な心境で映画を観始めた。

だが怨念となっても400年前に果たせなかった築城にかける武将・恩大寺隼人将(片岡愛之助)の熱い思いと、それに共感して12,000個という途方もない数の段ボールで城を造ろうとする女子大生・井原ナツキ(海老瀬はな)や彼女に協力する町の人々の馬鹿馬鹿しいまでの努力につい引き込まれてしまった。

果たして段ボールで巨大な城は出来上がるのか。そして400年間もの長い間、魂が満たされなかった恩大寺の怨念は成仏できるのか。

物語の展開が無理やりで出来すぎなところも目にはつく。大学の建築学科で学ぶ女子大生ナツキが次第に大工の棟梁として目覚めていく様をよりリアルに描いたほうが物語としては感動的になったかもしれない。
しかし変な理屈づけをするよりもこれくらい強引に進めた方がこの手の荒唐無稽な映画は面白くなるのである。

当然築城に反対する者も現れ、その筆頭である町長一派による妨害工作や恩大寺と町長の祖先の400年前の意外な関わりなどの伏線も張られている。

恩大寺役の片岡愛之助と女子大生ナツキ役の海老瀬はなの二人を映画で観るのはおそらく始めてだと思うが、なかなか堂々とした主役ぶりである。

特に現代では町役場のさえない職員とそれに憑依した武将の二役を演じる片岡愛之助(調べてみたら歌舞伎の人だった。)はこうも違う役柄ができるのかと思えるほどの好演である。

そして脇を固めるのが、こずるい町長役がみごとにハマっている江守徹を筆頭に、ふせえり、阿藤快、藤田朋子とこちはいろいろな作品でお馴染みの面々である。

監督の古波津陽はこれが初の長編映画とのことであるが、次はどんな作品を観せてくれるのかが楽しみな監督がまた一人増えてしまった。

2010/01/25 23:45

kira

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