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2009/日本/東宝
出演:玉木宏 北川景子 堂珍嘉邦 平岡祐太 黄川田将也 太賀 松尾光次 古秦むつとし 奥村知史 戸谷公人 三浦悠 山田幸伸 伊藤ふみお 鈴木拓 吉田栄作 鈴木瑞穂 吹越満 益岡徹 
監督:篠原哲雄
http://www.manatsu-orion.com/

偏差値:56.1 レビューを書く

緊張感はないが楽しめる潜水艦映画 [75点] [参考:2]

戦争映画には声高に反戦を訴えるものや、自虐的日本史感を全面に出し過ぎて、映画的にはどうなのと思える作品が多い中で、本作は潜水艦と駆逐艦の戦いに焦点を当てた娯楽作品となっているのが新鮮であった。

こう書くと不謹慎だと言われる方もいると思うが、もちろん戦争を肯定している訳ではない。

また本作も戦争肯定映画ではなく、玉木宏演じる艦長が人間魚雷「回天」での出撃を申し出る乗組員に言う「もったいない」の言葉だけで命の尊さや戦争の虚しさを感じることができる。

そんな台詞だけでは戦争の悲惨さは伝わら~ん、と言われる方は別の映画を観ればいいのであって、全ての戦争映画に反戦を前面に出した作り方を要求するほうが危険な気がしてならない。

まあそれを言い出すと長くなるので、ここから先は本作が娯楽映画としてどうであったかを書くこととする。

戦争映画に限らず潜水艦が舞台の映画を観るとなぜか緊張感がつきまとう。

活動できるのは狭い艦内だけ。酸素がなくなる恐怖に爆雷や魚雷による艦体破壊の恐怖。そして操舵不能になって耐圧深度以下に沈んだ時の圧壊の恐怖等々。

狭所恐怖症ではないはずなのに、たいていの潜水艦映画を観るとその恐怖がつきまとい緊張するのだが、この作品ではあまりその緊張感を感じなかった。

玉木宏が演じるイ-77号の倉本艦長が常に乗組員に安心感を与える言動をするので、観ているこちらもそう感じたのか、それとも脚本の甘さのせいかも知れないが、もう少しピリピリした緊張感があってもよかったのではないだろうか。

潜水艦vs駆逐艦だと名作『眼下の敵』があり、それと比べるのは酷かもしれないが、やはりあのくらいの緊張感のある作品にしてもらいたかった。

それとも監督は若い女性にも観てもらいたいと言っていたようであるので、あえてこのくらいの緊張感にしたのだろうか。

しかし私の行った映画館に限って言えば、観客は年齢層の高い男性が多かったようで、やはり戦争映画と言うだけで若い女性は敬遠するのかも知れない。

だから劇中で玉木宏が『のだめ』ネタの台詞を言うのだが、私とカミさんには受けたが、『のだめ』を知らない他の年配の人はただの台詞にしか聞こえなかったようであった。

戦いの終わり方はちょっと意外な展開で、まあ、甘いと言われるかもしれないがあれも一つの終わり方としてはありかなと感じた。

玉木宏の他にも若手イケメン俳優が数名となぜかCHEMISTRYの堂珍嘉邦(最初は誰かわからなかった)が出演しており、若い女性にも受けそうな配役であるが、そんな中で脇を固めたベテラン俳優陣、吹越満・益岡徹・吉田栄作の上手さが光る作品でもある。

2009/07/01 19:42

kira

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