コネクテッド
保持通話
2008/香港・中国/ブロードメディア・スタジオ/110分
出演:ルイス・クー バービー・スー ニック・チョン リウ・イエ
監督:ベニー・チャン
脚本:ベニー・チャン、アラン・ユエン
美術:イー・チュンマン
撮影:アンソニー・プン
アクション指導:リー・チュンチー
編集:ヤウ・チー・ワイ
音楽:ニコラス・エレラ
http://www.connected-movie.jp/
香港映画界がハリウッド映画『セルラー』のリメイクに挑戦!
その意表を突いた史上初の企画が、オリジナルを凌駕する傑作を生んだ!!
強烈な個性を持つフィルムメーカー&スターを次々と輩出し、アジアの枠を飛び越えてハリウッドの映画作りにも多大な影響を与えてきた香港映画界。なかでもジョン・ウー監督がトム・クルーズと組んだ『M:I-2』は世界中のド肝を抜き、アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督が放った『インファナル・アフェア』は、巨匠マーティン・スコセッシの手で『ディパーテッド』としてリメイクされ、栄えあるアカデミー作品賞に輝いた。ヒットを見込めるリメイク・ネタと新たな才能を探し求めるハリウッドの目利きプロデューサーたちは、つねに香港に向けて高感度のアンテナを張り巡らせているのだ。
このように傑出した人材とネタをハリウッドに供給してきた香港映画界が、あっと驚く“逆リメイク”を敢行して話題を呼んだのが『コネクテッド』である。ハリウッド映画の香港リメイクは、これが史上初となる大胆な企画。スタッフ&キャストの並々ならぬ職人技と情熱が異彩を放つこの映画は大好評を博し、第28回香港伝影金像奨(香港アカデミー賞)では、監督賞、主演女優賞、編集賞、アクション設計賞、音響効果賞の5部門にノミネートされる健闘を見せた。
携帯の通話が“命綱”となる極限状況!
香港の変化に富んだ地形をフル活用した究極のノンストップ・アクション
気になる元ネタは、ハリウッドのアイデアマンとして名高い鬼才ラリー・コーエンの原案をデヴィッド・R・エリス監督が映画化した2004年作品『セルラー』。ある日突然、謎の一味に監禁された女性が、壊れた電話を修復して密室から外部への連絡を試みる。そのSOSコールを携帯電話で受信した青年が、事件解決のために奔走するという物語だ。現代人の日常生活に欠かせないコミュニケーション・ツールを“命綱”に見立てた発想がきらりと光るこの映画は、最も効果的に携帯を活用した巻き込まれ型サスペンスとして、今なお多くのファンに愛されている。
製作&脚本を兼任したベニー・チャン監督は、抜群の面白さを誇る『セルラー』のベーシックな設定を受け継ぎつつも、ただの焼き直しでは満足せず、新鮮なインパクトをもたらすリメイク作りに挑戦した。まずオリジナル版の広大で真っ平らな地形のアメリカ西海岸から、猥雑で起伏の激しい香港に舞台を移し、大がかりな屋外ロケを実施して臨場感あふれる映像世界を創造。『香港国際警察/NEW POLICE STORY』『インビジブル・ターゲット』などで培ってきたシャープな演出力を遺憾なく発揮し、アクション面を目覚ましく強化させた。とりわけ誘拐犯一味を追跡する主人公の小型車が、狭い用水路を猛スピードで激走し、あれよあれよと反対車線に突っ込んで大混乱のクラッシュを引き起こすカー・チェイスには、VFXでは代用不可能な本物のスタントの醍醐味が凝縮されている。さらに市街地を一望する山からの急降下転落アクション、断崖絶壁での危機一髪サバイバルなどの見せ場を惜しみなく連打し、まさしくノンストップ・サスペンス・アクションの究極形を完成させた。
予測不可能なクライマックスに向かって疾走するスリリングな人間模様を、
中国語圏の実力派キャストが熱く体現
また、アクション映画にありがちな大味さとは無縁の緻密なプロットの妙も見逃せない。主役の男女をシングルファーザー、シングルマザーに設定することで、1本の電話で繋がった見知らぬ男女が絆を深めていく過程をエモーショナルに描出。親子の情愛を軸に、家庭と仕事の悩みや孤独を抱えた人々の人間模様が、巧みな伏線をちりばめて繰り広げられていく。絶体絶命の極限状況に陥った人間はここまで必死に頑張れるものなのかと、熱い感動すら呼び起こすストーリー展開に誰もが釘づけになるに違いない。『セルラー』の製作時から劇的に進化した、携帯の多彩な機能を取り込んだディテールも秀逸である。
スタッフはベニー・チャン監督とのコラボ経験も豊富な精鋭揃いで、キャストには中国語圏の実力派俳優たちが起用された。突然のSOSコールに翻弄される主人公アボンに扮するのは、『エレクション』『プロジェクトBB』のルイス・クー。負けっぱなしの冴えないメガネ男が、捨て身の大奮闘で犯罪者たちの思惑を狂わせていく様を、悲哀とユーモアたっぷりに好演している。囚われの身のヒロイン、グレイス役は、TVドラマ「流星花園〜花より男子」で人気を博した台湾の才女バービー・スー。『セルラー』で同じ役どころを演じたオスカー女優キム・ベイシンガーにも引けをとらない迫真の熱演と、持ち前の涼しげな美貌で観る者を魅了する。さらに『エグザイル/絆』などのジョニー・トー監督作品の常連俳優ニック・チョンが、警察で長年冷や飯を食わされてきた真面目な熱血警官の意地を体現し、胸のすく活躍を披露。『小さな中国のお針子』『王妃の紋章』で知られる中国の若手注目株リウ・イエは、誘拐犯のリーダー役で凄み十分のキレっぷりを見せつけている。
●STORY
ロボット設計士のグレイスにとって、それはいつもと何ら変わりない朝だった。徹夜の仕事をこなした彼女は、他界した夫との間にもうけた6歳のひとり娘ティンティンを車で学校に送り届ける。ところがその帰り道に黒ずくめの男たちが出現し、理由もわからぬまま拉致され、倉庫のような密室に監禁されてしまう。グレイスは極限のパニックに陥りながらも、一味がいなくなったすきに粉々に破壊された電話の修復を試みる。
気弱な経理マン、アボンにとって、それは人生の岐路となりうる重大な日だった。たびたび家族との約束をすっぽかして妻に逃げられ、会社からはヤクザまがいの借金取り立て業務を強いられる日々。そんな公私共に絶不調のアボンの心のよりどころは、幼い息子ギットの存在だ。もうすぐ留学先に旅立とうとしているギットが待つ空港に駆けつけ、父親としての信頼を回復したい。それが負け犬人生に浸かったアボンの唯一の願いだった。
グレイスが苦労して配線を接触させて発信した電話は、車で空港に向かう途中のアボンの携帯に繋がった。「助けて……誘拐されたの!」。悪戯と決めつけて顔をしかめるアボンだったが、グレイスと名乗るその女性の恐怖におののく声はあまりにも真に迫っていた。やむなくアボンはグレイスの訴えを聞き入れ、偶然通りかかった交通課の警官ファイに携帯を手渡す。しかしタイミング悪く一味が戻ってきたため、グレイスは事情を説明することができない。血まなこになって何かを探しているらしい一味のリーダーは、グレイスの弟ロイの居場所を執拗に問いつめてくる。さらに冷酷な本性を剥き出しにしたその男は、グレイスの目の前でロイの親友を射殺し、次に最愛の娘ティンティンを殺すと宣言するのだった。
ファイが立ち去った後にその恐ろしいやりとりを電話越しに聞いたアボンは、自分がただならぬ大事件に巻き込まれたことを確信していた。「……あなただけが頼りなんです。娘を救ってください!」。
警察に立ち寄っている時間はない。同じ一児の親としてグレイスに同情したアボンは、ティンティンが通う小学校に向かうが、わずかに後れをとって彼女を一味にさらわれてしまう。行きがかり上、猛然と追跡を始めたアボンは、凄まじいカー・クラッシュを引き起こした揚げ句、携帯のバッテリー切れを防ぐために立ち寄ったショップで発砲騒ぎまで起こし、気がつけば指名手配犯になっていた。
テレビで報じられたその奇妙なニュースは、すでに勤務を終えたファイの目にも届いた。少し前に路上で出くわしたアボンのことをよく覚えていた彼は、元特捜刑事ならではの鋭い嗅覚を働かせ、独自の単独捜査を開始する。一方、アボンはロイが収容された病院に向かい、一味の本当の素性を知って愕然とする。それでもなおロイを拘束した一味を追う彼は、連中が必死に探していたビデオカメラの強奪に成功。そこに記録されていたのは、凶悪犯罪の証拠となる驚くべき映像だった。
命からがら一味をふりきる際にグレイスとの通話が途絶えてしまったアボンは、もはや腹を括るしかなかった。今なお空港で自分のことを待ちわびているギットのため、そして父親として、ひとりの人間としての誇りを取り戻すためにも、この事件を自力で解決せねばならない。ビデオカメラと引き替えにグレイスらを救出しようと決意したアボンは、一味との交渉場所である空港へと向かうのだった……。
8月1日(土) 新宿武蔵野館他全国順次ロードショー