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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

2008/日本/若松プロダクション/190分
出演:坂井真紀 ARATA 並木愛枝 地曵豪 大西信満 
監督:若松孝二
脚本:若松孝二、掛川正幸、大友麻子
製作:若松孝二、尾崎宗子、大友麻子
撮影:辻智彦、戸田義久
音楽:ジム・オルーク
ナレーション:原田芳雄
http://www.wakamatsukoji.org/

偏差値:64.5 レビューを書く

「総括」という名のリンチ [98点] [参考:1]

僕は政治については何も語りません。この点数は政治的な思想とか社会的な意義とか抜きにして、純粋に映画として面白かったからつけた点数です。

衝撃作です。もうショックの連続でした。タイトルに「実録」と書いている手前、嘘をつくことはできないわけで、責任の重たさ、作らなければならないという若松監督の執念が伝わって来る「作家映画」ともいうべき渾身の力作になっています。戦後日本最大の犯罪事件をこれほどわかりやすく描いた作品は他にないでしょう。

内容は肉厚です。3時間をオーバーする上映時間ながらも、4時間分の内容をぎゅぎゅっと詰めた感じで、最初の1時間はかなりテンポが早くてついて行けないくらい。字幕の表示があまりに早すぎて、日付とか名前も実名で表示されてるんですけど、すぐに表示が消えてしまうので、普段本とかを読まない僕は大変でした。

3部構成に大別できると思います。第1部は大学紛争事件について。第1部は政治背景の説明で、半分は生々しい資料映像を利用したドキュメンタリー映画になっていて、くすんだ色調の再現映像部分のみ坂井真紀ら俳優たちが演じています。第2部は山岳ベース事件について、第3部は有名なあさま山荘事件について描かれています。

第2部、第3部はほぼ完全にドラマ仕立て。僕が面白いと思ったのは第2部ですね。あさま山荘についてはまだ生まれていない人達でも割とテレビの資料映像で見覚えがあるものですが、山岳ベース事件については全く知らなかった世界なので、この事実には驚愕するばかりでした。まじで怖かった。この映画を見た後、ネットであさま山荘事件について調べてしまいました。映画を見たことでそれだけこの歴史に興味を持ったわけですから、この影響力は大きいと思います。こんなことが実際にあったなんて。

「総括」という名のリンチ。これは衝撃でしたね。何度も劇中「総括」って言ってて、最初は「なんだ??」と思ったのですが、なんだか見ているうちにどんどんこの言葉の感覚が自分の中でも狂って行くような錯覚を覚えました。しばらく「総括」という言葉が耳から離れませんでした。革命戦士になるために彼らのやってることは、どう考えても狂気の沙汰としか思えないのに、彼らはそれを正当化して納得してしまう。無茶苦茶です。やるせないもどかしさの中、誰かが目覚めて抵抗してくれないかと期待しながら見ていました。逃亡した人が何人かいたのが救いです。

第3部については、もうちょっと見せ方を頑張って欲しかったなと思いました。山荘の外から中を覗いた映像はあるのに、山荘の中から外を覗いた映像が全くなく、第2部と違って、純粋に犯人たちの視点で映画を見ることができなかったことが残念でなりません。とはいえ、ここまで衝撃を受けた作品は滅多になく、全体を通して言えば「凄い」の一語です。延々とバックに流れているロックのリズムも見事に映像とシンクロして昭和の雰囲気をうまく再現していました。ジム・オルークのラストのエレキギターの演奏が泣けます。

2009/07/08 05:06

シネマガ管理人

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