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レイチェルの結婚

Rachel Getting Married
2008/アメリカ/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/112分
出演:アン・ハサウェイ ローズマリー・デウィット デブラ・ウィンガー ビル・アーウィン アンナ・ディーヴァー・スミス トゥンデ・アデビンペ マーサー・ジッケル アニサ・ジョージ 
監督:ジョナサン・デミ
脚本:シドニー・ルメット
http://www.sonypictures.jp/movies/rachelgettingmarried/

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ジョナサン・デミ監督、
入魂のホームドラマで長編劇映画に復活
 『サムシング・ワイルド』(86年)で注目され、『羊たちの沈黙』(90年)でアカデミー監督賞を受賞、『フィラデルフィア』(93年)では社会派ドラマに挑戦と、幅広いジャンルを横断して傑作をものにしてきたジョナサン・デミ監督。ここ数年はドキュメンタリー映画に熱を入れていたが、ジェニー・ルメットによる型破りな脚本を一読して、「真実や痛みやユーモアに対する大胆なアプローチがとても気に入った」と、監督を快諾。撮影監督のデクラン・クインとともに「今まで作られた中で一番美しいホームビデオ」を目指して、リハーサルなしの撮影に挑んだ。長女の結婚式当日までの3日間の中に、バックマン家が経験した過去の悲劇、今も続く不協和音、それでも切れることのない絆という家族の物語と、多くの人に祝福される陽気な結婚パーティが絡み合う。わかりあえない葛藤に胸をかきむしられながら、それでも前に進んでいく人々の勇気と愛。そこには家族だからこそなし得る力という希望がきらめいて、忘れがたい名作が誕生した。また、さまざまな人種が自然に分かち合う祝祭には、デミ監督が思い描く理想像が込められているようで、感慨深い。

手作りの陽気な結婚式であらわになる
家族の傷と再生への道
 コネチカット州に暮らすバックマン家の長女レイチェルの結婚式を2日後に控えた日、次女キムはとある施設を退院する。父親や姉が自分に向ける眼差しや言葉に神経を尖らせるキムの存在は、結婚式の準備で華やぐバックマン家の空気を破壊する衝撃力を持つ。だが、つねに自己中心的に見えるキムこそが、実はもっとも家族の絆を希求してやまないことが徐々に見えてくる。立ち直ることが出来ない悲劇を体験した家族ひとりひとりが胸にしまいこんだ悲しみを、誰よりも傷ついているキムが、あえてえぐり出す。痛々しいまでに正直であろうとするキムの言動は、時に腹立たしくなるほどに他者の神経を逆なでする。だが、その先にこそ、深い溝を乗り越える再生への光があることが、心温まる結婚式の翌朝、静かに描かれるのだ。

アン・ハサウェイを初めとする
実力派キャストによる家族の肖像
 ひっきりなしに煙草をふかし、気遣われることにも無視されることにも腹を立てる、人一倍傷つきやすいキム・バックマンを大胆かつ繊細に演じるのは、若手実力派女優ナンバーワンのアン・ハサウェイ。その渾身の演技は、この光と影が錯綜するホームドラマの中心軸として緊張感をもたらせ、第66回ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門の主演女優賞にノミネートされた。妹を心配しつつも時に爆発するレイチェル役のローズマリー・デウィットは、出演映画が相次ぐ注目の女優。姉妹の実母を演じるデブラ・ウィンガーは、娘の結婚式にもどこか他人行儀で接する、掴みどころのない、冷たくも見える母親を、さすがの貫録で好演。対して、姉妹の衝突をはらはら見守る優しくも過保護気味の父親ポールを演じるのは、デミ監督の『クライシス・オブ・アメリカ』(04年)にも出演したビル・アーウィン。ポールの妻キャロルを演じるアンナ・ディーヴァーズ・スミスもデミ作品には『フィラデルフィア』『クライシス・オブ・アメリカ』に出演、監督と気心の知れた2人が、波乱含みの家庭劇を土台で支えているのだ。また、結婚式を彩るミュージシャンたちとしてデミ監督と長年の親交を持つ面々が登場、祝福の感動をこの上なく盛り上げている。
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Storyストーリー
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 とある施設から退院したキムを、父のポール・バックマンと継母のキャロルが迎える。担当のローザは心をこめて「グッド・ラック。しっかりね」と、キムの手を握る。キムの姉レイチェルの結婚が2日後に迫っていた。レイチェルは、友人たちの手を借りて自宅でおこなう手作りの式とパーティの準備におおわらわだ。9カ月ぶりに自宅に戻ったキムは、家の中に知らない人が大勢いて、ピリピリした表情を見せる。キムが入っていたのは麻薬中毒の治療施設。退院後も定期的に依存者たちのミーティングに出なければならない彼女が、その日、遅れてミーティング室に入った時、ちょうど自己紹介を終えた青年キアレンは、レイチェルの結婚相手シドニーの親友だった。
 両家の家族や友人が集まってのリハーサル・ディナーに、姉妹の実母が再婚した夫と遅れてやって来る。レイチェルの親友エマの祝福のスピーチで、キムは新婚夫婦が遠くハワイで暮らすことを知り、顔を曇らせる。だが帰宅後、怒りを爆発させたのはレイチェルだった。「私の結婚を祝うディナーで自分の身の上話をペラペラと。この子は自分の病気が世界の中心だと思ってるのよ!」。だが、言い争ううちに、レイチェルは妊娠したことをふと漏らす。大喜びする家族や友人を横目にキムは「こんな大ニュースで私の話を吹っ飛ばす気?」と怒り、レイチェルは妹の態度に悲しくあきれた顔を見せる。
 翌日のミーティングでキムは自分の過去を語る。それは、16歳のときに鎮痛剤でハイになったまま幼い弟イーサンを車で公園に連れて行き、その帰り道、湖に車ごと落ちてイーサンを溺死させてしまった、悲しすぎる出来事だった。
 明日を本番に控え、パーティの席順決めで再び気まずい空気を漂わせたものの、姉妹は一緒に車で美容院に行く。そこで、数年前にキムと同じ病院にいたという男性が、「君の強さに勇気づけられた」と話しかけてきた。だが、彼が感動した話はキムの作り話だった。姉妹は幼い頃に叔父に性的虐待を受けて姉は拒食症になったという話だ。その嘘を耳にしたレイチェルは怒り心頭で美容院を出て行く。タクシーで帰宅したキムも喧嘩腰で、姉妹は胸に秘めてきた辛い思いを吐き出しあい、キムは車で家を出てしまう。
 キムは実母の家に行き、「なぜラリっている私にイーサンをまかせたの?」と詰め寄る。母親に顔を殴られ、動揺したキムの車は夜の林の中に突進。翌朝、左眼に大きなアザをこしらえて帰宅した妹の体を、レイチェルは優しくシャワーで洗ってやるのだった。
 前日の雨が上がり、快晴で迎えた結婚式。音楽業界で成功しているシドニーらしく、バンドや歌手が次々に登場して陽気に盛り上がる。日が落ちると庭に張ったテントでパーティは続くが、まだ招待客がいるうちに実母が帰ると言い出して、レイチェルをがっかりさせる。母親は娘にも距離を置く、どこか冷たい人だった。
 翌日の早朝、キムは迎えに来たローザとふたたび治療施設に向かう。キムとレイチェルは家の前で優しく抱擁しあう。出て行く車に手を振ったあと、レイチェルは宴のあとの庭をひとり静かに見つめるのだった。

4月18日(土)より、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開