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映画は映画だ

2008/韓国/ブロードメディア・スタジオ/113分
出演:ソ・ジソブ カン・ジファン ホン・スヒョン コ・チャンク ソン・ヨンテ チャン・ヒジン 
監督:チャン・フン
脚本:チャン・フン、オク・チンゴン、オ・セヨン
原案・製作: ム・ギドク
http://www.eiga-eiga.jp

偏差値:61.1 レビューを書く 読者レビュー(1) 予告を見る

ソ・ジソブ × カン・ジファン 
まさに光と影。強烈な個性がぶつかり合う、圧巻の演技!
2人にとっての最高傑作が誕生した!!
ソ・ジソブとカン・ジファン。いま韓国で最も注目されている、人気・実力ともに兼ね備えた2大スターの共演が実現した。ジソブはドラマ「ごめん、愛してる」「バリでの出来事」の大ヒットで、日本でも絶大な人気を誇るスター俳優の1人。なんとベストジーニストの1人にも選ばれたほど、日本での人気は根強い。映画『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』での夜叉役に続き、本作が韓国本国での兵役復帰後第一作となる。強く物静かなタイプである彼が演じたのは俳優の夢を捨て切れない非情なヤクザ。彼の魅力のひとつである物憂げな表情と闘志を内に秘めた荒々しいアクションで、見る者の心をわしづかみにする。
ジソブが静なら、動の魅力を持つのがカン・ジファン。「がんばれ!クムスン」「90日、愛する時間」「京城スキャンダル」など、出演ドラマを次々とヒットさせ、日本でも人気急上昇中。9月の来日時には羽田空港に2000人ものファンが押し寄せたほど。これまでは端正で優しい役の多かった彼が、本作ではイメージを一新、ヤクザより暴力的で高慢な映画スター役に挑戦している。感情がストレートで、性格の浮き沈みが激しく衝動的、なのになぜか憎めないスターに独特のアドリブを加えながら、なりきることに成功。身体能力を活かした勢いあるファイトシーンと鍛え上げられた肉体美にも注目だ。

ヤクザを本物らしく演じたい映画俳優と、映画俳優になりたかったヤクザ。俳優の"スタ"とヤクザの"ガンペ"。出会うはずのなかった2人の運命が映画を通じて、交錯していく。高慢で気性が激しいスタは映画の撮影につい熱が入るあまり、次々と共演者を病院送りにしてしまう。そんな彼の相手役を引き受けてくれる者など誰もいない。困った彼はヤクザのガンペに相手役を頼み込む。俳優の夢を捨てきれず、ヤクザの世界に嫌気がさしていたガンペは、ある条件付きで出演を承諾する。その条件とは2人のファイトシーンは実戦で行うこと。演技ではなく、体と体を本気でぶつけ合い、どちらかが倒れるまで闘うというものだった。どんな乱闘も尻込みしたことがないスタは了承する。スター気取りの彼は自分を過信する余り、実戦慣れしているガンペに勝てないとは気づいていなかった。  
最後のラストシーンまで気の抜けない映画撮影が始まった。それは彼らにとって、新しい役割での新しい世界の幕開けも意味する。果たして、彼らの映画は完成するのだろうか。その先に待っている2人の人生の行く末は......。ちなみにカン・ジファンによれば、クライマックスの干潟での泥まみれファイトシーンは事前のリハーサルが全く役に立たなかったそうで、実戦さながらだったということも書き加えておきたい。
製作は世界の映画人から称賛され続けている鬼才キム・ギドク。監督は、数々のギドク作品で助監督を務めてきたチャン・フン。本作が初めての監督作品となる。彼は全く違う世界に生きる2人の男が、相手の世界を求めるというアイデアにひきつけられ、ギドクの原作を1年近くかけて、脚本化した。映画を題材にした作品にふさわしく、劇中の要所要所に映画ファンの心をくすぐる仕掛けが盛り込まれているのも見逃せない(一例を挙げると、ガンペが特別出演している映画は『ペパーミント・キャンディ』のイ・チャンドン監督のデビュー作『グリーンフィッシュ』。主演であるハン・ソッキュらの映像が効果的に使われている!)。映画を愛してやまない才能が集結し、こだわり抜いた本作、まさに映画愛に満ち充ちた作品の完成である。


■ストーリー
 1人で映画を観ているヤクザのガンペ(ソ・ジソブ)。その映画に出演しているのは映画俳優のスタ(カン・ジファン)である。そんな出会うはずのなかった2人がある日偶然、同じ高級クラブに居合わせる。スタが別室にいると知り、ガンペは手下にサインをもらいに行かせるが、高慢なスタは「本人に来させろ」と拒む。自ら部屋に乗り込み、サインをもらうガンペにスタは「短い人生、無駄にするな」と吐き捨てる。その後、自宅でヤクザ役の台詞の練習をするスタ。なかなかそれらしく聞こえない。ふと、出会ったガンペの声色を真似てみる。「だからお前はクズと言われるんだ」。一方、ホテルの一室で映画を観ているガンペはスタに言われた言葉をつぶやいていた「短い人生、無駄にするな」。  ガンペのボスであるペク会長は現在収監中で、裁判を待つ身である。ガンペは時々会長に面会に行き、囲碁の相手をしながら指示を仰ぐ。彼の留守をいいことに同じ組織のパク社長は趣味の古美術品を収集したり、やりたい放題。会長はガンペに「下の奴らをあまり信じるな」と諭す。
 その頃、スタは新作であるアクション映画のファイトシーンに取り組んでいた。が、見え見えの演技に痺れを切らした監督が、もっとリアルにできないのかと激高。すると相手役はスタを誤って殴ってしまう。頭にきたスタはやり返し、相手は大怪我を負うはめに。その結果、相手役を引き受ける俳優が誰一人いなくなってしまった。困り果てたスタは、周囲の反対を押し切り、ガンペに「映画に出ないか?」と持ちかける。最初は渋ったガンペだが、自分ともガチンコで闘うことを条件にOKする。素人の参加を拒んでいた監督もしだいにリアルな映像に満足していく。共演している女優のミナもガンペに興味を持ったようだ。ただ1人、スタのマネージャーであるイ室長だけはスタの身を心配していた。その夜、スタは恋人ウンソンに会う。恋人といっても、いつも人目を避けて、車の中で密会するだけ。コソコソ会う関係に嫌気がさした彼女もまた、スタの元を去っていこうとしていた。
 翌日の撮影では、スタとガンペが対峙するシーンを撮影。スタがアドリブで酒をガンペの顔に浴びせるとガンペは焼酎のビンを割り、スタの顔に突きつけた。現場に緊張が走るが、監督は大満足の表情。順調に撮影が進む中、スタはテレビで若い頃のガンペが端役で出演していた映画を見かける。翌日、「演技、上達したな。本物の役者みたいだ」とガンペをからかうスタ。互いに距離が縮まっていったようにみえた。
 ある日、ペク会長の家に泥棒が入り、裁判で不利になる証拠が盗まれる。それがパク社長の仕業だと確信した会長は、面会に来たガンペに社長を片付けろと命ずる。その命令どおり、ガンペとその手下たちは社長を滅多打ちにし、縛り上げて船に乗せる。あとは海へ沈めるだけというとき、何を思ったのか、ガンペはスタの台詞を真似て言う。「遠くへ行け。死人として生きろ」。ガンペの心に変化が少しずつ訪れていた。
 海辺でのロケ現場。ミナが1人泣きながら、海へと入っていく。周りにはカメラが見当たらず、慌てて海に飛び込むガンペだったが、当然、撮影中だった。本気で自分のことを心配してくれたガンペにミナは心奪われる。そして、急接近した2人の熱愛を目撃したスタは、急速にウンソンが恋しくなるのだった。
 ある日、そんなスタとウンソンの密会現場を盗み撮りしたビデオが送られてきた。チンピラからの脅迫に取り乱すイ室長。スタは金の工面に自分のスポーツカーを売りに出すが、話にならない。ついにガンペの力を借りることに。しかし、ガンペたち本物のヤクザのやり口にショックを受けたスタは警察に届けようとする。止めたのはイ室長。実は彼もこの事件にからんでいたのだった。
 映画の撮影は残すところ、ラストシーンのみとなった。時同じくして、ガンペはパク社長が舞い戻ってきたことを知る。今度こそ、片をつけようと決心したガンペは映画の撮影を抜けることを宣言。手下を引き連れて、パク社長を捕まえに行くが、逆に捕まってしまう。命だけは助かったガンペは、傷だらけの姿で、再び撮影現場に舞い戻る......。