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花の生涯~梅蘭芳~

Mei Lanfang
2008/中国/アスミック・エース=角川エンタテインメント/147分
出演:レオン・ライ チャン・ツィイー スン・ホンレイ チェン・ホン ワン・シュエチー イン・ター ユィ・シャオチュン 安藤政信 六平直政 
監督:チェン・カイコー
http://meilanfang.kadokawa-ent.jp/

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 梅蘭芳(メイ・ランファン)は、祖父の代から続く北京の京劇の名門に生まれたが、早くに両親を亡くし、父親のように慕っていた伯父の梅雨田(メイ・ユィティエン)とも少年時代に死別した。皇太后の誕生日に赤い服を着なかったという些細な罪で処刑されたのだ。伯父は京劇人生の厳しさと励ましの言葉を手紙に綴り、梅蘭芳に残してくれた。
 10年後、清朝崩壊後の中華民国の時代。青年になった梅蘭芳(ユィ・シャオチュン)は女形のスターとして多忙を極めていたが、海外で学んだ邱如白(チウ・ルーパイ)(スン・ホンレイ)の講演を聴き、古い決まり事に縛られず生身の人間を演じるべきだという主張に感銘を受ける。邱も梅蘭芳の優美にして情熱あふれる舞台に心を奪われ、ついには司法局長の地位も家も捨てて、梅蘭芳と義兄弟の契りを結ぶ。
 邱のアドバイスを受け、輝きを増していく梅蘭芳の舞台。伝統を重んじる師の十三燕(シーサン・イェン)(ワン・シュエチー)は快く思わず、対決を挑む。それぞれ別の劇場で3回上演して人気を競うのだ。初日、敬愛する師と戦う重圧におののき、出番を前に歌詞を忘れる梅蘭芳。その日は負けたものの、2日目は大胆にも現代悲劇に挑戦して客をさらい、3日目の勝利も確実となる。ヤクザと賭けをしていた十三燕は窮地に陥るが、「負けることは恥ではない。恐れることが恥なのだ」と梅蘭芳に語り、最後まで戦う。そして「役者の地位向上に最善を尽くせ」と、京劇の将来を託すのだった。
 数年後。円熟期を迎えた梅蘭芳(レオン・ライ)は、大事なブレーンである邱と馮子光(フォン・ツーコアン)(イン・ター)とともにアメリカ公演を計画していた。しかし、家を抵当に入れて資金を調達することに妻の福芝芳(フー・チーファン)(チェン・ホン)は断固反対する。
 そんな折、京劇界きっての男形女優、孟小冬(モン・シァオトン)(チャン・ツィイー)と出会い、率直な彼女に惹かれる梅蘭芳。ふたりは舞台での共演を通して愛を深めていく。それは梅蘭芳にとって初めての恋であり、彼女と一緒にいると自由を感じることができた。梅蘭芳は京劇界の付き合いを拒むようになり、「俳優の王」の扁額贈呈式でも「私はただの歌い手。生涯歌うことだけが願いです」と真情を述べ、扁額を受け取らずに帰ってしまう。
 邱は梅蘭芳を京劇界に引き戻すために、小冬と別れさせようと考え、芝芳に彼女の住所を告げる。芝芳は「彼はあなたのものでも私のものでもない。観客のものよ」と涙ながらに訴え、小冬は潔く身を引くことにするが、そうとは知らずに、彼女を脅すための刺客まで雇う邱。ようやく芝芳の同意を得てアメリカ公演が正式に決まった後のパーティーで、邱は小冬の決心を知り、刺客を止めようとするが間に合わなかった。女装の刺客が小冬に拳銃を向け、駆けつけた警官隊によって射殺された。翌朝、小冬は列車で永遠に去った。
 1930年、ニューヨークでのアメリカ公演初日は、事前の酷評と大恐慌にもかかわらず大成功を収めた。しかし刺客の一件の真相が発覚し、梅蘭芳と邱の間には溝ができてしまう。
 1937年、北京が日本軍に占領されると、梅蘭芳は京劇を辞め、邱と別れて家族とともに上海に移った。だが、日本軍は梅蘭芳を占領政策に利用する計画を立て、京劇に詳しい田中少佐(安藤政信)を差し向けて公演を依頼する。断わった梅蘭芳は田中の上官によって拘束され、日本刀で脅されるが、屈しなかった。
 田中は北京へ行き、邱に説得を依頼する。「誰が戦争に勝とうと、梅蘭芳は生き続けるべきだ」と語る田中。同じ思いの邱は、梅蘭芳の名で上海のラジオ局に電話をかけ、年末の上海公演を発表させる。ところが12月13日、日本軍は南京を占領。公演はその宣伝に利用されることが判明する。追い詰められた梅蘭芳がとった行動──それは危険を冒してチフスの注射をすることだった。
 衰弱して髭を生やした姿で記者会見場に現れた梅蘭芳は、京劇役者として敬意に値する生き方を貫くことを表明する。任務を果たせなかった田中は、自らの命を絶つことで計画に終止符を打った。
 梅蘭芳は病床に伏した。邱は梅蘭芳が大切にしていた伯父の手紙を芝芳から見せられ、胸を打たれる。ごく普通の人生を望みながら、京劇にすべてを捧げた梅蘭芳。役者としての孤独と戦うとき、唯一の支えとなっていたのが肉親からの愛情に満ちた手紙だったのだ。
 1945年、日本が降伏し、梅蘭芳は舞台に復帰する。大勢の人に迎えられて劇場に入った彼は、ひとりで楽屋へと向かう。満員の客席には、幕が開くのを万感の思いで見守る邱の姿があった......。

2009年3月7日 新宿ピカデリーほか 全国ロードショー