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2008/日本/12分
監督:加藤久仁
ナレーション:長澤まさみ

(データベース登録者:ちりつも

偏差値:63.1 レビューを書く

なんともいえない寂しさと安らかさ [95点] [参考:2]

このレビューはネタバレを含みます

物語は海の水がだんだんあがってきてしまう街。
この海に沈んでいく街に、たった一人だけおじいさんが住んでいる。
他の人は誰もいない。
おじいさんの家族も、今はもう誰もここには住んでいない。
おしいさんだけが、なぜか一人住んでいる。
おじいさんの家といっても、もうそれは一部屋の狭さだけだ。
哀しいかな、時間は待ってはくれない。
ようしゃなく街の海の水はあがってくる。
おじいさんの部屋また一つ水の中に沈んでいく。
すると、おじいさんは、部屋の上にレンガを積んで小さな部屋を作り出す。
まるで、「つみき」のような、いまにも崩れそうな、倒れそうな、細長いでこぼこの塔のような家。

きっと、いつか、この家も積み増しできず、この世から消え去ってしまう日がくるのだろう。
このなんともいえない寂しさはなんだろう?
そして、その時、おじいさんはどうなってしまうのか?

見ていてすごく、このおじいさんの危うさを感じる。
けれども、おじいさんはなんてことなく、平然と、淡々とレンガを積んで小さな部屋を作り出す。
なんともいえない、ユーモアすら秘めている不思議な人だ。

ある日、水の中に落としてしまったお気に入りのパイプを拾うため、海に潜ったおじいさん。
過去に作った、それぞれの水没した部屋を見て、自分の記憶が、温かい過去がだんだんと思い起こされていく…。
奥さんとの出会い、結婚。生まれてきた子供、大きくなった子供とその家族。
たくさんのその「つみきのいえ」の思い出が、水の中に消えていった部屋の中でよみがえる。

全体のトーンはとても、切なく寂しい。
同時に、人の過去の思い出がいかに温かいものなのかを、感じさせる珠玉の作品。
アカデミー賞、おめでとう!!

2009/02/23 22:22 (2009/03/21 21:56修正)

ちりつも

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