ヘブンズ・ドア
2008/日本/アスミック・エース/106分
出演:長瀬智也 福田麻由子 長塚圭史 大倉孝二 和田聰宏 黄川田将也 三浦友和
監督:マイケル・アリアス
http://h-door.jp/
偏差値:56.4 レビューを書く
オリジナル版には及ばないが… [80点]
※ネタバレを含むレビューです。
本作のオリジナル版である「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」との大きな違いは主役が男の2人組から男(長瀬智也)と15才の少女(福田麻由子)の2人組に変更されている点である。
主役の1人が少女になることによってオリジナル版にはない少女の果たしたかった夢が増えた分、ストーリーに幅を持たせることが出来たため、これはこれで良かったのではないかと思う。
死ぬ前に遊園地に行きたいとかショッピングしたいとか素敵な人とキスをしたいとか、そんな他愛もない望みをかなえようとする男の姿がありきたりではあるが観ていて微笑ましい。
ただその分、オリジナル版にある死ぬ前にいい女を抱きたいとか、とにかく無茶苦茶に遊び回りたいとかの男の欲望みたいなものが描けなくなったのは賛否の分かれるところである。
物語はオリジナル版の筋書きをなぞるように進んでいくが、ここはオリジナル版を超えているなと思える展開はない。
逆に悪人の車を盗んだり郵便局強盗をする場面はオリジナル版の方が丁寧に描かれている上に悪人の間抜けぶりが笑えるのだが、本作にはそれがない。
せっかくいい手本があるのに、本作のような描写をした監督の意図が理解できないが、オリジナル版の物真似と言われたくないのであれば、それ以上のものを出さないと観る側は納得できないのではないか。
最も残念なのは悪人のボスが最後までただの悪人で終わったことである。
悪人のボスからは最後にオリジナル版のルトガー・ハウアーのような男気のあるセリフが出ることを期待していたが、まったくの肩透かしを喰らわされて、へっ?何で?と思ってしまった。
悪人の子分である田中泯の行動や刑事の三浦友和の台詞にちょっとルトガー・ハウアーを思わせるような部分があったが、それなら田中泯を悪党のボス役にしてルトガー・ハウアーの台詞を語らせた方がはるかに作品に深みが出たように思う。
ラストシーンについては敢えて言及はしない。オリジナル版に似てはいるが異なる部分もある終わり方なので、どちらが好きかは両作品を見比べて判断してもらいたい。
本作を一言で言うなら、名作の写し書きをしていたらいつの間にか線が歪んでしまった、そんな印象が拭えない作品である。
しかし印象に残る台詞もたくさんある。
人生が二度あるなら言うこと聞く。でももうないから聞かない。
跪いて生きるより立ったまま死にたい。
彼らもまた、天国で海に沈む太陽の話をしているのだろう。
2009/02/16 20:29 (2009/11/07 06:19修正)
kira
トラックバックはこちらのアドレスから受付しています。トラックバックについて