2008/日本/東宝/118分
出演:佐藤浩市 志田未来 松田龍平 石田ゆり子 佐々木蔵之介 佐野史郎 津田寛治 東貴博 冨浦智嗣 木村佳乃 柳葉敏郎
監督:君塚良一
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偏差値:61.4 レビューを書く
加害者の家族もまた被害者である [85点] [参考:1]
このレビューはネタバレを含みます
物語はある日突然、殺人事件の容疑者の妹となった少女(志田未来)と、彼女の保護を命ぜられた心に傷を持つ刑事(佐藤浩市)の行き場のない逃避行で語られていく。
劇中で使われる「加害者の家族もまた被害者である。」の言葉、この言葉に異論を唱える人も大勢いるだろう。
正直、自分が被害者側の立場になったらと思うと、この言葉をどう受けとめられるのかは分からない。
しかし、この作品で正義の味方面をしながら、実は視聴率や新聞雑誌の売上げのため、執拗なまでに加害者の家族を追い詰めるハイエナのようなマスコミを見ると、先程の言葉もなるほどと思えてしまう。
だがマスコミよりも恐ろしいのは、姿を見せることなく、加害者の家族やそれを保護する刑事の私生活をも暴き追い詰めて行くインターネット社会の恐怖である。
他人とのコミュニケーションを深めるのにこれほど便利なものはないはずのインターネットが、使う者の心一つで、最も邪悪な武器になりうることをこの作品で改めて思い知らされた。
この映画には今回の殺人事件の被害者の家族はほとんど登場しない。
その代わり3年前にあった別の殺人事件で幼い息子を失った両親(柳葉敏郎・石田ゆり子)が登場し、刑事と彼が保護している少女をかくまうことになる。
全く異なる事件とはいえ自分の息子の命を奪った者と同じ罪を犯した者の妹に対し、彼らがどのような感情を持ち、どのように接するのか、観ているこちらにも緊張感が伝わってくる。
また、その事件には少女を守る刑事が大きくかかわっており、それが刑事の大きな心の傷、そして両親の心の傷となっている脚本が実に巧みである。
物語の終わりは唐突にやってくる。別の新たな事件が発生すると、過去の事件など取るに足らないものであったように忘れ去られていく。
これが日々報道される数々の事件を興味本意で見ている我々とそれを報道するマスコミとそれを煽る闇のネット社会の現実なのかも知れない。
いつしか世間は忘れても、犯罪は被害者の家族そして加害者の家族にも一生消えることのない心の傷として残ることを我々に教えてくれる作品である。
2009/02/02 22:53 (2010/07/06 20:41修正)