2006/日本/108分
出演:小池栄子 豊川悦司 仲村トオル 篠田三郎
監督:万田邦敏
プロデューサー:仙頭武則
脚本:万田珠実、万田邦敏
撮影監督:渡部眞
美術:清水剛
衣裳:高橋さやか
音楽:長嶌寛幸
助監督:久保朝洋
(データベース登録者:kira)
偏差値:58.6 レビューを書く
歪んだ純愛 [85点]
このレビューはネタバレを含みます
京子(小池栄子)は孤独なOLである。家族との付き合いはなく、職場にも友人はおらず、同僚からはいいように使われている。
坂口(豊川悦司)は孤独な男である。生きている意味を見失い、死刑になるために見ず知らずの一家3人を殺害する。
TVカメラの前で謎めいた笑みを浮かべながら逮捕された坂口を見た京子は自分と同じ匂いを感じた坂口に激しい恋心をいだき、仕事を辞めてまで坂口の裁判に通いつめる。
国選弁護人の長谷川(仲村トオル)にも一切口を開かない坂口に差し入れや手紙を送り続ける京子に興味を持った長谷川は、京子の希望を聞き坂口と面会させる。
坂口の死刑が確定した時、京子は坂口と面会することができると言う理由だけで獄中結婚する。
それは坂口を助けるためではなく、自分の分身とも言える坂口が死刑になることを京子が待ち望んでいるからであり、坂口が死刑になることにより自分の純愛が完結すると京子が信じているからである。
だが京子と出会ったことにより何かが変わった坂口は長谷川の思惑どおり死刑判決を不服として控訴をする。
しかしそれは京子にとっては大きな裏切りであり、そのため京子はある決意をして長谷川とともに坂口に面会するが…
京子の一途ではあるが歪んだ純愛から何とも言えない恐怖を感じる作品である。
殺人犯と獄中結婚した相手としてマスコミに取り囲まれた京子が、逮捕されたときの坂口と同じように無言でTVカメラに向かって笑みを浮かべ、これで坂口と1つになれたと喜ぶ姿には背筋に冷たいものを感じた。
今までグラビアアイドルかTVタレントとしか思っていなかった小池栄子が複雑な京子の心情をみごとに演じているのにも驚かされる。
本作は2006年に製作されたが、なぜか2年間お蔵入りとなっていた作品である。
通り魔による殺人が増加している現在、殺人犯に共感するあまり獄中結婚までする設定が倫理上問題になったのかも知れない。
しかし都会の孤独から歪んだ愛情に走った女性の狂気とそれを演じた小池栄子、この2つだけでも見て損のない作品である。
2008/12/15 23:31 (2009/11/07 06:23修正)