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2002/中国
出演:タン・ユン リウ・ペイチー チェン・ホン ワン・チーウェン 
監督:チェン・カイコー

(データベース登録者:ちりつも

偏差値:63.9 レビューを書く

父の愛情と衝突 [97点]

このレビューはネタバレを含みます

「北京ヴァイオリン」は若きヴァイオリニストと父親の愛情と衝突を描いた物語。彼と音楽教師の友情を描いた物語。彼の初恋、そして物質主義の社会に対して抱く疑念を描いた物語。
映画のクライマックスで息子はある選択をしなくてはならない。幸福を選ぶか?それとも成功を選ぶか?

監督は語る。
僕が14歳だった頃、中国文化革命へと突入した。その時、僕は父親を裏切るか、公衆で恥をかくか、強制的に選択肢を押しつけられ、僕は父を裏切ることを選んだ。
父親を傷つけた後で、革命を選び得た幸せを素直に喜ぶことができなかった。精神的に苦しみ、途方に暮れていた僕はバッハの作品を耳にした。
(以下中略)
文化革命が終わるころ、僕はこの話を父にした。それは父に許してもらった後のこと、どれだけ父を愛しているかを僕は告げることができた。
「北京ヴァイオリン」の撮影が終わり僕は気づいた。これは父と僕の物語でもあるのだと。(以下略)

私はなぜ、自分がこれほどこの映画に惹かれたのかを、監督のこの文章で気がついた。
「北京ヴァイオリン」のクライマックスはこの映画の切り札ともいうべき感動するシーンだ。
多分、誰もが見ていて身体を高揚ぜずにはいられなくなってくる。
少年が走る、父親に向かって。
少年が走る、そして父親のためにヴァイオリンを弾く。
そして父は少年の生まれた過去を思い出す。
その間、チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲のリズミカルで、スピード感あふれるオーケストラ演奏が流れていく。
その素晴らしい音楽と素晴らしい映像が見事にマッチして、息子と父親の愛情の勝利を表現する。
このシーンは本当にいい!
私はもう泣いているというよりは、涙が出て出て仕方がない~という悲惨(?)な感じになってしまった。

なんていうのか、ものすごく強い人間の愛情を音楽のパワーで「ドカーン!」と突きつけられたような、そんな凄さなのだ。
多分、“僕がどれだけ父を愛してるか”という監督の“想い”が、このクライマックスにたくさん詰まっていたんだなぁと。
まさに監督のお父さんへの想いが、私の心を強く打ったのである。

ある意味、言葉で愛しているということはひどく簡単だ。
恥かしいが、私なんて恋人ができるとバカのひとつ覚えみたいに「私のこと愛してる?」てオウムのように繰り返す。
他にパッと思いつかないのだ。
本当に自分でも他に表現方法がないのか?とあきれ返る。

難しいのは言葉ではなく、それをどういうカタチで現すことができるか、ということだろう。
見えない愛情を相手にわからせるのは難しい。
身近にいればいて、それが当たり前になり、いつしか相手への思いやりを忘れてしまう。

自分が愛を描く映画を特に好むのは、いろんな人の愛情表現をたくさん見て“愛情体質”になりたいからかもしれない。

2008/10/19 23:33

ちりつも

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