Mr. Bean's Holiday
2007/イギリス/東宝東和/89分
出演:ローワン・アトキンソン エマ・ドゥ・コーヌ ウィレム・デフォー カレル・ローデン
監督:スティーヴ・ベンデラック
偏差値:54.4 レビューを書く
これで見納め―「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」 [75点] [参考:2]
このレビューはネタバレを含みます
ローワン・アトキンソンの当たり役、Mr.ビーンの映画版が帰ってきた!アトキンソンにビーンの映画版第2弾製作を決意させたのは、前作から10年という月日が経ったことと、年齢的にビーンを演じられるのは今が最後だという事実。ビーン独特の動きを再現するには、かなりの体力と運動量を要求されますし、ビーンの魅力の1つに“年齢不詳”というものがありますしね。確かに今年53歳になるアトキンソンにとっては、今作で有終の美を飾りたいというのが本音でしょう。
紆余曲折を経て実現したビーン映画第2作目では、前作の失敗を踏まえて、テレビシリーズ時代のノリを再現することに重点が置かれています。前回は、“マトモにしゃべるビーン”を売りにして却ってしらけてしまったわけですが、今回は初心に戻り、ビーンを全く言葉の通じないシチュエーションに放り込むことで、彼のパントマイム的可笑しさを強調する形になっているのですね。
冒頭のカンヌへの旅行をゲットするシーンから、短いスケッチをテンポ良く重ねつつ、ロードムービーならではののんびりしたムードの中で、ストーリーは快調に進んでいきます。意思の疎通のままならない少年と、少年より精神年齢は低そうな(笑)ビーンの交流が、なんともいえずほのぼのと可笑しい。フランスの片田舎の牧歌的な風景と、それに全くそぐわないビーンのキリキリ舞いのギャップに笑いつつ、もう1人のビーンの旅の仲間サビーヌを加えることで、画面に安定感が生まれました。テレビでは、ビーンはいつもぬいぐるみのテディと一緒だったのですが、今回彼(?)は旅に同行していません。それがビーンの状況に孤立感を与え、同時に活躍の場を広げることにもなりました。カンヌまでの珍道中は、ビーンにとって日常生活を離れた冒険譚となり、彼の行動にいつも以上のワイルドさをもたらしています。
自転車での激走シーンや、ビーン・シリーズではおなじみ、高級レストランの中での食事ネタ(今回はエビ)等面白いスケッチもあるのですが、私が今回気に入ったのは、この3バカトリオの噛み合わない車中での会話ですね。ビーンの存在だけが妙に浮いていた前作のような違和感は皆無で、凸凹トリオがなんともいい感じで一枚の絵の中に馴染んでいるのですよ。
旅は道連れ、世は情け(笑)。旅を経て意気投合した彼らがいよいよカンヌ入りし、ビーンに着せられた汚名を晴らすため、映画祭の会場にもぐりこむ段階から、画面ははさらにボルテージを上げていきます。にっくきカーソン・クレイに意趣返しするいたずらが、どんなどんでん返しを招くかは、本編をご覧になってからのお楽しみ。クライマックスでは、映画用にスケール感を増したハラハラドキドキが、最高のカタルシスをもたらしてくれますよ。“自分らしく生きることの大切さ”を、まさかビーンのおっさんから教えられるとは思ってもみませんでした(笑)。
2008/05/16 15:40