Across The Universe
2007/アメリカ/東北新社/131分
出演:ジム・スタージェス エヴァン・レイチェル・ウッド ジョー・アンダーソン デイナ・ヒュークス ボノ
監督:ジュリー・テイモア
偏差値:60.5 レビューを書く
ビートルズファン冥利に尽きる [85点] [参考:2]
このレビューはネタバレを含みます
タイトルを見たとき、「お、ビートルズの曲と同じタイトルじゃん」と思ったら、全曲ビートルズだけで作られたロック・ミュージカルだった。
この手のミュージカルは過去に前例がある。フーの『Tommy(トミー)』、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』である。いずれもケン・ラッセル、アラン・パーカーという一癖ある監督が作った作品だったので、それなりに見せるものがあったと思う。そしてここにようやくビートルズの楽曲を使用した『アクロス・ザ・ユニバース』が登場したわけだが、21世紀に今更という感さえある。しかし、そこはさすがビートルズ。60年代を背景に、当時のドラッグ&ヒッピームーヴメントとベトナム戦争の対比させつつ時代を反映させた重厚な内容で描きながらも、ビートルズの曲は時代に流されず普遍的なものであることを再確認させられる。
とにもかくにもビートルズファン冥利に尽きる。ビートルズファンでなくても十分楽しめるとは思うが、マニアが喜びそうな小細工がいっぱいあって、「おぉ、凝っとるのう。この監督はよくわかっとるわい」と見ていて嬉しくなる場面がいくつもあった。
驚くのは、ビートルズの曲の歌詞を一切変更していないこと。歌詞をそのままドラマのワンシーンの中に自然に溶け込ませている技術には脱帽である。「そうきたか」とうならせるシーンもあったし、ビートルズの曲がここまでミュージカルの歌としてしっくりくるものかという驚きもあった。クライマックスの「ヘイ・ジュード」は後半のシャウトのところまでちゃんと劇のセリフに使っていたところに恐れ入った。
選曲もいい。いわゆる「ヘルプ」や「イエスダデイ」など一般的に知られた曲を使うのではなく、あえてファン向けのヘヴィな選曲である。「カム・トゥゲザー」、「アイ・ウォント・ユー」、「アイム・ザ・ウォルラス」、「ディア・プルーデンス」、「ビコーズ」、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」、「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」、「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」など、ビートルズ通なら興奮しきりの選曲。これらの曲の映像をしっかり作っているところにはファンとして製作者に感謝の気持ちさえ覚える。
屋上で「ドント・レット・ミー・ダウン」を歌うところの顛末は本物のビートルズとまったく同じだし、登場人物の名前も全員ビートルズの曲の中に出て来る名前がつけられていてニヤリとさせられた。セクシーなセディというネエちゃんが歌う曲が「ヘルター・スケルター」だったり「オー・ダーリン!」だったり、結構ハードなビートルズナンバーだったのもウマイ。あえて「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」はジョー・コッカー、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」はジェフ・ベックのカバーバージョンを使っているのも心憎い演出。一番最後の曲が「フライング」だなんてマニアックすぎ。
ストーリーだけをいうとなんてこたぁない作品だったけど、万華鏡のような映像と音楽だけでもう満足感いっぱいになった。
2009/01/26 21:47
おっしゃる通り、興奮しきりでした!
jake (09/10/20 22:36)