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(ハル)

1996/日本/東宝/118分
出演:深津絵里 内野聖陽 山崎直子 
監督:森田芳光

偏差値:62.9 レビューを書く

パソコン通信で恋をしよう [95点] [参考:2]

今はあたりまえとなっているメールやチャットであるが、それがまだパソコン通信と言われていた頃に作られた森田芳光監督の秀作である。

人生の目標を見失いつつある男「ハル」(内野聖陽)と恋人を亡くした女「ほし」(深津絵里)。

映画のフォーラムを通じて知り合った2人が、顔も本名も知らないままメールのやり取りだけで次第に心を通わせあって行く姿が微笑ましい。

映画の中での2人はそれぞれが関わりのある人々とは言葉を交わしている。

しかし2人が直接会話するのはメールやチャットだけで、その画面上の文字が映画の大部分を占めているため森田監督としてはかなり実験的な作品だったのではないだろうか。

だが映画を観ている我々は画面上のメールを読むことにより2人の目線で彼らと同じ感覚を共有することができ、見事に森田監督の術中に入ってしまうのである。

もちろん2人の関係が最初から上手く行くわけではなく、それぞれが関わりを持つ人々が時には障害となり、時には味方となる。

「ほし」と同じよう恋人を亡くした男・山下(宮沢和史)が「ほし」にお互いの恋人を忘れないために一般人とは全く違う価値観での結婚を申し込むが「ほし」には到底受け入れることが出来ず、山下の接触を断つために仕事を転々とすることになる。

このストーカーとも取れる山下の存在に結構ハラハラするのだが、THE BOOMのボーカルでもある宮沢和史がなかなかいい味を出している。

「ハル」が出張で「ほし」の住む町を新幹線で通るときに1度だけ出会う機会があるが、走っている新幹線からはお互いの顔を見ることはできなくても、それぞれがそこにいることをビデオカメラで写しながらハンカチを振って確認しあう場面が実にいい。

そしてある理由から「ハル」を避けるようになりメールも送らなくなった「ほし」であるが、やがて「ハル」の存在の大切さに気づき、初めて東京駅で出会うラストシーンが秀逸である。

今観るとパソコン通信やフロッピーディスク(重要なアイテムだが、どこに使われるかは内緒)など、少し古さを感じる人もいるかもしれないが、初々しい内野聖陽や深津絵里を観ることのできる爽やかな作品である。

なお、本作は当時パソコンを持っていなかった私がこの作品を観たことによってパソコンを買ってパソコン通信をしようと決意した記念すべき作品でもある(笑)

2009/04/23 00:24 (2009/11/07 06:16修正)

kira

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