歩いても 歩いても
2007/日本/シネカノン/114分
出演:阿部寛 夏川結衣 YOU 高橋和也 田中祥平 寺島進 加藤治子 樹木希林 原田芳雄
監督:是枝裕和
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家族の絆 [90点] [参考:2]
※ネタバレを含むレビューです。
優しく心地よい音楽。ゴンチチかなと思っていたらやはりそうであった。
長男の15回目の命日に実家に集まった長女夫婦と次男夫婦。
老いていく両親と彼らの会話だけで映画は進んで行く。
開業医である父親の期待を背負いながら、溺れる子供を助けるために命を落とした長男。
父親への反目から医師とは別の職業につき、子持ちの女性と結婚した次男。TVではぶっきらぼうな役が多い阿部寛が実に適役である。
家族だけの会話と書いたが家族以外に1人の男性が関わってくる。それは長男が助けた子供である。
この子供が何ともさえない青年に成長している。せっかく助けられた命なのだからもう少ししっかりした大人になってもいいのだが、これが現実である。
青年の帰り際、母親が来年の命日にも来てほしいと言う。
次男がもうそろそろ呼ぶのをやめてやれば、と言った時に母親が言いはなつ「10年ぐらいで忘れてほしくない。」の台詞が強烈である。
青年に対する言葉や顔つきには出さないが母親は恨む相手がほしいのである。
わがままな父親を上手くあしらい、長女とは楽しそうに料理をし、次男には早く子供を作れと言っていた普段の母親の顔はそこにはない。
どこにでもいる老齢の母親から人を恨むことを糧とする母親に一瞬変貌する母親役の樹木希林が怖いほどの名演である。
どんな人間でも普段の会話や行動からは分からないものを心の奥底に持っていることと、それを見守る家族の優しさや絆といったものを考えさせられた作品である。
2008/10/22 22:38 (2009/11/07 06:05修正)
kira
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