ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


燃える仏像人間

2012/日本/インターフィルム/80分
出演:井口裕香 寺田農 
監督:宇治茶
http://moebutsu.net

偏差値:--.- レビューを書く 読者レビュー(0)

京都で相次ぐ謎の仏像盗難事件。そんな中、女子高生・紅子(井口裕香)は実家である寺の仏像を盗まれ、その上両親までも惨殺され、天涯孤独の身に。彼女は両親と旧知である円汁(寺田農)から、どうやら犯人はシーダルダという盗賊集団かもしれないと聞かされ、復讐心に身を焦がすのだが、身寄りのない彼女はとりあえず円汁の寺へ引き取られることに。そこで彼女は円汁秘密の部屋に偶然迷い込み、両親と仏像が融合したかのような醜い仏像人間と遭遇する・・・・。

本作は劇メーションというアニメの原点的な手法で制作されているのだが、驚くべきはその圧倒的な画力とその世界観、萌え全盛の時代に真逆の世界観を創出し、観る者全てを間違いなく映画の世界へと誘っていく。劇メーション(切り絵を背景の上で動かし、更に特殊効果などで加工/『猫目小僧』が有名)の単純な制作工程を悪く評する向きもあるが、本作をみれば、何故この手法なのかが一目で理解できる。つまり現況のアニメでは表現できないほどの画力がこの手法を選択させているのだ。事実、本作の制作期間は約1年半、通常の映画作りを凌駕するほどの時間を割いているのだ。

この空前の作品を作り上げたのが、作画・撮影・監督とほとんどの作業を一人でこなした京都在住の新人クリエーターの宇治茶、まさに衝撃のデビュー作である。彼を見出したのは食玩ブームの仕掛け人でもあり、フィギア界では知らぬ人はいない玩具プロデューサーの安齋レオ、彼が教える大学で、当時学生であった宇治茶の才能を発掘した。そして、このデビュー作を彩るのが、主演を務めた人気・実力派声優の井口裕香(「劇場版 とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇蹟」インデックス役/本年2月全国公開)、その圧倒的な演技力で作品のグレードを更に引き上げている。注目は大物俳優でもある寺田農の出演、「天空の城 ラピュタ」のムスカ役として声優の世界でも伝説的な存在である。本作は実相時昭雄監督に捧げるオマージュ作品でもあり、実相時組の役者として活躍していた寺田は本作には欠かせない存在である。又、実相時昭雄夫人であり、伝説の映画女優、原 知佐子も出演、他にもウルトラマン・エースのヒロイン、星光子が特別出演している。

5月18日(土)公開