Waterloo Bridge
1940/アメリカ/108分
出演:ヴィヴィアン・リー ロバート・テーラー マリア・オースペンスカヤ
監督:マーヴィン・ルロイ
偏差値:64.0 レビューを書く
究極のメロドラマ [100点] [参考:1]
このレビューはネタバレを含みます
究極のメロドラマといっていい名作です。
何度となく見るたびに、戦争によって引き裂かれてしまう、美男美女のカップルの哀れさと悲しさが描きだされてます。
と、同時にこの映画は人間の運命、特に不運をはっきりと残酷にも描いてます。
あともう少しでロイと結婚できそうだったのにそれができない。
ロイの出征を見送ったがために、マイラはバレエ団を首になってしまう。
マイラは食べるものすら、ことかくことになり窮地に陥いってしまう。
それでも、ロイの帰りを唯一の希望とするマイラ。
しかし、願いは空しく新聞の戦死者の中に、ロイの名前が!
それも、折り悪くロイの母親との初対面の時に、戦死を知ってしまい、母親の前でマイラは失態してしまう。
ロイの母親は息子の死を知らないので、「一体何なのだろう、この女は!」とマイラに不信感を抱いて帰ってしまう。
マイラはショックのあまり病に倒れてしまう等々。
中盤からのマイラは不運にもて遊ばれるかのように気の毒です。
その間、マイラの親友のキティが、マイラをけなげにも助けるのですが、いつしか彼女も食べていくために、夜の女に身を汚していってしまうのです。
彼女は、よくつぶやきます。「なんだかものすごく、怖い、怖いの・・・」と。
キティのつぶやきが物語のラストの悲劇を暗示しているかのようです。
このキティ役のバージニア・フィールドが、あまりにも人がいいというか、聖女のようで泣かせられます。
自分の事より友達のマイラのために、生きてるような女性なのです。
「果たして、私は親友のために、ここまで自分を犠牲にできるだろうか?」とあえて考えたくもない事を、考えさせられる、そんな美しい心を持っているキティです。
バージニア・フィールド、彼女もすごく美貌の女優さんだと思います。
マイラはロイとの再会で、幸福をつかもうとします。
自らの卑しい過去(それが果たして、この時代本当に卑しいことなのか?)を忘れて、愛するロイの家に招かれて、ロイの家族、親戚、交友している上流の人々の中で、2人は軽やかにダンスを披露します。
踊る2人を誰もが、お似合いのカップルだと認めざるを得ません。
しかし、ロイの叔父の温かい一言が逆にマイラの心の良心を、問いただせてしまうのです。
「ああ、やはりだますことはできない、私はロイと結婚できる女ではないのだ!」と。
マイラは思い余ってロイの母親に事の真相を打ち明けます。
ビビアンのエキセントリックさがよく出ているシーンです。
私は、このロイの母親がなぜか、余り好きになれません。
どこか彼女には偽善さを感じるからです。
本当に、聡明な貴婦人であれば、果たしてマイラの過去を知っても、黙って行かせたでしょうか?
上流階級の特権の中で暮らしている、傲慢さがどこか出てる気がします。
突きつめれば、戦争が2人の仲を引き裂いた作品ですが、英国特有のプライドの高さが不幸を招いたという気もします。
もう少し、見栄を捨てて心のまま素直に甘えれば2人は幸せになってたのかもしれない・・・。
ビビアン・リーは「風と共に去りぬ」がとても有名ですが、この「哀愁」も、素晴らしい演技だと思います。
霧のウォータールー橋にたたずんでいる年老いたロイは、独身だったのでしょうか?
私の想像(希望)では生涯、マイラだけを想って生きていてほしいものなのですが・・・。
2008/04/30 22:28