ヒア アフター
Hereafter
2010/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画
出演:マット・デイモン セシル・ドゥ・フランス ブライス・ダラス・ハワード ジョージ・マクラレン フランキー・マクラレン
監督:クリント・イーストウッド
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
http://www.hereafter.jp
魂の行き着く先は [90点] [参考:3]
臨死体験をした女性、自分の分身とも言える双子の兄を亡くした少年、そして死者と会話できることに悩む男性。
これまでいろいろな作品で命の尊厳を描いてきたクリント・イーストウッド監督のおそらく初となる今の命から一歩踏み込んだ死んだ後に魂はどこに行くのかを描いた作品です。
異なる国で進行する全く繋がりのない3つのストーリーがどこで1つに繋がるのかに興味は集中しましたが、まさかあそこまで引っ張るとは思ってもいませんでした。
そのため前半部分を長く感じる人もいるかも知れませんが、クライマックスで一気に帰結する展開が見事です。
普段は映画を観る前に出来るだけ情報を入れないようにしているのですが、先日テレビで観たイーストウッド監督のインタビューが妙に心に残り、よけいこの作品が印象的に感じられました。
そのインタビューの最後の質問「あなたは死ぬことが怖くないですか。」に対する齢80歳のイーストウッド監督の答えは「死ぬことは怖くない。避けられないことを怖れて何もしないでいるより、今出来ることをやりたいからね。だから今死んだとしてもいい人生だったと思うだろうね。」
イーストウッド監督のこの言葉を知らなければこの作品から受ける印象はまた違ったものになっていたような気がします。
この作品は前述の気持ちで生きているイーストウッド監督が、現世での命を終えた後に魂が行き着く先である『ヒアアフター』つまり来世に対して持っている1つの答えなのではないでしょうか。
テレビで流されている予告編には映画の中の派手な映像がたくさん使われていますが、大部分はイーストウッド監督らしいドラマ性の富んだ作品になっています。
マット・デイモン演じる死者と会話できる男が交霊する場面はいたってシンプルで、もっと派手な演出があった方が映画的には見映えがしたかも知れません。
交霊にかかる時間はほんの一瞬で霊の言葉として話す内容もけっこう曖昧です。依頼人を探るような答え方は偽霊能力者っぽく見えるのですが、それがあったためか彼が本物の霊能力者だとわかる少年とのエピソードには泣けました。
エンドロールで製作総指揮にスピルバーグの名前を見つけた時には驚きました。スピルバーグが監督をしていればまた違った作品になっていただろうなと一瞬思いましたが、やはりスピルバーグ監督の娯楽性よりもイーストウッド監督の痛いドラマ性の方がこの作品のテーマには合っていたように思います。
最後に、この作品に心地良く流れるなんとも優しくて悲しくて暖かい音楽には心が癒されましたが、作曲者は予想通りクリント・イーストウッドでした。
2011/02/25 18:43
kira
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