ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
There Will Be Blood
2007/アメリカ/ウォルトディズニースタジオ/158分
出演:ダニエル・デイ・ルイス ポール・ダノ ケヴィン・J・オコナー
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
偏差値:57.5 レビューを書く
愛は存在しなかったか? [80点]
※ネタバレを含むレビューです。
ダニエル・ディ・ルイス主演作品。この作品でアカデミー賞主演男優賞を獲得した。
ダニエル・ディ・ルイスが演じる石油王としての成功の話。
商才に長けた主人公の石油王としての半生を描いている。
この主人公、頭は切れるし商才があるのだが、過去のことについて多く語らない。どういう育ち方をしたかは謎のままなのである。しかし、ある程度想像がつくようにキャラクターがしっかりと描かれていてぼやけた印象は少ない。
強烈な金と生に対する執着。その欲望に素直に従い淡々と実行している。孤独も否定しない。
ただ、私はそれを見ても嫌悪しきれなかった。彼なりの愛情も見える場面があり、今の主人公を作ったのは過去の辛い経験により金しか信じられなくなってしまったと推察したからだ。
金がもたらす大きな力を知っている。そして、持っていない者に対しての仕打ちも知っている。その価値観は、主人公の時代から現代まで何も変わってはいない。
この映画は主人公を通して、莫大な富の前に人々が翻弄されていく滑稽さや恐怖を描いているのだ。
また、宗教の持っている胡散臭さ危うさも皮肉っている。シーソーみたいに入れ替わる金と宗教の力関係が面白い。
主人公の感情の大きな吐き出す場面は少ないのだが、終盤の宗教家に対する爆発した感情には圧倒される。前半の冷静でミステリアスな印象とは対照的で偽善も正義もなく底が割れている。
果たして主人公が得たかったものは、金だったのか、名声だったのか、孤独だったのか・・・。親子の関係で得たものは・・・?観た後に、脅威を感じるより先に寂しさを抱えてしまう話だった。
2010/10/15 14:31
peco
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