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2009
出演:ツァオ・チー ブルース・グリーンウッド カイル・マクラクラン アマンダ・シュル ジョアン・チェン 
監督:ブルース・ベレスフォード

(データベース登録者:ちりつも

偏差値:62.2 レビューを書く

踊るということ! [97点] [参考:1]

このレビューはネタバレを含みます

中国人バレエダンサー、リー・ツンシンの自伝を映画化した作品。本作の主演に現在、ロイヤル・バレエ団のプリンシパルであるツァオ・チーが素晴らしいバレエと演技を披露している。
私はこの手の映画にとても弱いよう。
「北京ヴァイオリン」もしかり、まず中国の芸術の強さと、貧しくも温かく中国人独特の家族という強い絆。

毛沢東時代の共産主義が吹き荒れる、中国の文化政策で「バレエ」という芸術があることすら知らない少年が、「見込みあり」との事で、無理やり家族と別れて、北京の舞踏学校でスパルタ教育を受け、メキメキと才能を開花させていく。
そしてサマースクールとしてアメリカのヒューストンへ留学する。
北京から自由の地・アメリカへ着いた主人公・リーのカルチャー・ショックといったら!

それまで、自分が教え込まれていた資本主義国は、暗くみじめな国ではなかった。
それどころか、人々は豊かで自由奔放で、エネルギッシュに生きている。
「中国よりアメリカの方が良く踊れるんだ、なぜならここは“自由”だから・・」
このリーのセリフが全てを物語っている。

若いリー・は亡命する事を決めた。
あれほどまで愛する家族と離れても、このアメリカで自由に踊ることを求めた。
このシーンは、ダンサーとは?芸術とは何ぞや?と感じさせられる。

バレエは人間の身体を開放する芸術。

共産主義の規制に縛られた思想を反映する、ガチガチの踊りは、あえていえばもう「バレエ」とはいえない。
バレエは凄い芸術だ。
ダンサーの肉体が宙を切り、神のごとく跳び舞う姿は、時空を超えた何か異次元を見ているような錯覚を覚えることすらある。
それくらい、本物のバレエダンサーは凄い!
このリー・ツンシンというダンサーを知らなかった事を後悔してしまった。
凄いドラマチックな人生をおくっている。
いや、当時のソビエトを亡命したヌレエフやバリシニコフしかり、祖国を亡命したダンサーたちは皆、祖国の郷愁を思いながら踊っていたのだろう。

ラストはもう、それまでリーと同じようにずっと我慢していたかのように、私も涙がどっと眼から落ちた。
熱かった、すごく熱い涙が落ちてしまった。

2010/09/08 19:26

ちりつも

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